2026/5/31 レター
#診察室
体重は、訊く 体重を量らずに、訊いています。 外来での話です。検診ではあらかじめ機械的に測定されてしまいます。でもそれではせっかくの情報が失われてしまうのはないでしょうか。 外来では、まず訊きます。「体重は?」——この三文字、あるいは五文字の問いは、ときに人間性を炙り出すでしょう。 「体重は?」「えー、夏は水を飲...
2026/5/11 レター
#診察室
美術館のカフェで 「関係ないことで恐縮ですが」と学生さんが言った。 関係ないことで恐縮、という前置きは、それ自体が言葉遊びのようだ。恐縮は態度を示すが、言葉にした時点で縮こまるどころか「今から面白いことを言うよ」の意味である。この言葉遊びを作ったのは何十年も前の芸能記者だったと思う。 だいたいこういう前置きの後に...
2026/3/26 レター
#診察室
「檸檬」の déjà vu 既視感 2026年3月24日、朝日新聞の「天声人語」が、神保町の電話ボックスに集まる若者たちと梶井基次郎の『檸檬』を結びつけて語っていた。人気アニメ『チェンソーマン』の聖地巡礼と、かつて京都の丸善にレモンを置きたいと憧れた文学少年の思い、これが見事に重なるというコラムだ。 さらに評論家...
2026/1/31 レター
#診察室
社会的な微生物伝播の意義 ピロリ菌の疫学から紐解く「生物学的レジリエンス」 Nature 2025: Social transmission of the human gut microbiota 保育園や幼稚園という「集団生活」の場は、教育の機会であると同時に、目に見えない微生物たちの巨大な交換市場でもあります...
2025/12/24 レター
#診察室
縁 ある日、患者さんが父に外来で「お誕生日おめでとうございます」と手紙を渡そうとしていた。彼も父と同じぐらいの年齢である。 誕生日から数日経過していた。 父は封筒に何かが入っていると思ったらしく「結構です」と固辞しようとしていた。普段金銭は断るからだ。 しかし傍で見ていた僕は「これは本当に中身は手紙だ」と直感した...
2025/11/20 レター
#診察室
批判的思考とウィット 日本語では「批判的思考」と翻訳するので、なにやら「相手の言う事を否定しながら考える」という意味にとれてしまうが、英語だとクリティカルシンキングで、別に相手を否定することでは全然ない。 唐突に何を書いているのかというと、医者だってデタラメを言うかも知らん、と常に考えながら患者さんは聞いておいて...
2025/10/30 レター
#診察室
あなたの引き出し、閉じっぱなしになっていませんか 外来では時折、唐突に、誰かに言われたか、テレビで見たか、免許証の書き換えか、きっかけは色々なのだが、なんの具体的エピソードもなしに「先生、近頃どうも物忘れがひどくて。いよいよ認知症でしょうか」と言う人々がいる。平均0.5人/日ぐらいだから時折、でもないか。 その品...
2025/9/30 レター
#診察室
コミュケーション論「歳のせい」 「先生、目がぼやけて先日眼科に行きましたら、『歳のせいだ』と言われました」 「その先生は、おそらくあなたが想像する意味とは少し違うつもりで、その言葉を使ったのだと思います。『悪い進行性の病気ではないから、心配しすぎなくてよい』という意図で、安心してほしくて口にされたのではないでしょ...
2025/9/17 レター
#診察室
テニスウェアを着て、さっそうと診察室に入ってくる男性がいる。日焼けした肌に、きりりと引き締まった表情。80歳代とはとても思えない若々しさである。椅子に腰掛けると、彼はにこやかにこう言うのだ。 「最近、体力がついてきたように思います」 その言葉を聞くたび、なぜか胸の奥でひっかかる。笑顔はまぶしいほど元気に見えるのに...
2025/9/16 レター
#診察室
壁を前に、学者はどう振る舞うか あるインターネット掲示板に、こんな質問が出ていました。 「数学オリンピックの難しい問題に取り組んで、4時間も5時間も考えても全くアイディアが出ません。自分は数学の道をあきらめるべきでしょうか?」 正直に言えば、この質問は冗談(いわゆる“釣り”)の可能性もあります。しかし、もし本気で...
2025/7/22 レター
#診察室
「言語ゲーム ― Term 6.1」 患者のA1cが6.1%であった。 6.1という数字で何を思い浮かべるだろうか。カリウムなら「やべー」であろうし、A1cであれば「ああ、食後に上がってるな」である。 そういう職業である。もちろん赤血球寿命は人により違う。血液内科が専門であれば「おや、鉄欠乏?」などと思うのかもし...
2025/4/30 レター
#診察室
私の外来にありがちなこと しばしば患者さんたちは独特の言い回しをしますが、発想が違うため自分のワーキングメモリ(短期記憶部分)でインデックス化(何かと関連付ける作業)できず記憶の宮殿に残らないのです。半日経過する頃には忘れているのが残念。だから時々診療が終わってすぐにメモをすることがある。このセリフもその一つです...
2025/2/9 レター
#診察室
風邪薬研究(成人) はじめに 風邪薬の適切な選択は、一般市民にとっても医療従事者にとっても重要です。しかし、市販の風邪薬は多種多様であり、その成分や効果の違いを正確に把握することは容易ではありません。本研究では、市販されている風邪薬のランキングを調査し、その成分の比較・考察を行うことで、適切な風邪薬の選択について...
2024/11/28 レター
#診察室
Sinus Sinus を、「ジーヌス」と呼ぶか、「サイナス」と呼ぶか。もちろん、ラテン語を学んでいないと「ジーヌス」とは呼ばないのでしょうが、私が卒業した横浜市立大学では全国でも珍しい「ラテン語で解剖学を学ばせる大学」だったから、横市出身者(しかもある程度古い先生)は当然「ジーヌス」と、少なくとも頭の中では呼ぶ...
2024/10/31 レター
#診察室
10月はピンクリボン月間 記憶が混乱しているのですが、おそらく自分は医学部に入ってから、夏休みにまとまった時間があると父の勤務する杏林堂林病院を見学していたと思います。ある日病室で「この男性は乳がん」と説明してもらいました。もちろん男性にもあり得る病気ですが、珍しい症例がよくこの小さな病院に、などと感心していまし...