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行き詰まった人へ数学者からのアドバイス / 血圧測定時に死んだふりをすると / AI時代の食卓 / 薬が効いたかの判断は難しい

目次

壁を前に、学者はどう振る舞うか

あるインターネット掲示板に、こんな質問が出ていました。

「数学オリンピックの難しい問題に取り組んで、4時間も5時間も考えても全くアイディアが出ません。自分は数学の道をあきらめるべきでしょうか?」

正直に言えば、この質問は冗談(いわゆる“釣り”)の可能性もあります。しかし、もし本気で悩んでいるとしたら、とても大切な問いではあるけれど。好きなことを見つけられるのは人生で最高の幸せの一つであり、誰かに「やめろ」と言われてやめるものではありません。少なくとも、数学オリンピックの問題に挑戦している人なら「自分で決めてやり続けることが大切」だと知っているはずです、とはいえ。

先輩たちのアドバイス

掲示板には、人生の先輩や研究者たちからさまざまなアドバイスが書き込まれていました。実はこうした質問は、しょっちゅうあります。しかし不思議なことに、皆飽きもせず、毎回似たような助言が並ぶのです。まるで役割分担でも決まっているかのように。それを整理して紹介しましょう。

  1. 散歩をすること

    森の中を歩いてみる。皿洗いのような単純作業でも良い。頭を休ませると、不意にアイディアが浮かぶことがあるからです。

  2. 人と話すこと

    学会に人が集まるのは、議論や交流が新しい発想を生むから。良い研究者には必ず良い仲間や指導者がいます。

  3. 長い時間をかける覚悟

    数時間で答えが出なくても当たり前。時には5年、10年、100年かけて考えるのが学問です。

  4. 別の問題に取り組む

    一度手を離して他の課題に向かうと、思わぬ形で解決の糸口が見つかります。

  5. 競技」と「学問」を区別する

    数学オリンピックは競技です。博士課程の研究は別の営み。混同しないことが大切です。

  6. 勉強して新しい道具を手に入れる

    解けないのは知識や方法が足りないからかもしれません。本や論文を読み、使えるツールを増やすこと。

  7. 条件をゆるめて考える

    すべてを解決するのではなく、制約をつけて「とりあえずの答え」を探すのも立派な戦略です。

  8. 休むこと

    休憩はただの怠けではありません。頭を整理する大切な時間です。

誰も「死んだふりをしろ」とまでは言いませんでしたが、「休め」という助言はそれに近いかもしれません。

凡人と数学者の違い

人は悩んでいると、つい「これは人生全体の問題なんだ」と大げさに考えがちです。つまり、考えを広げすぎてしまうのです。ところが数学者は逆で、まずは「小さな特別な場合(特殊解)」を探すことから始めます。一般的なことを考えるのはその後です。

そしてもう一つ面白いのは、数学者が「歩く」ことを大切にしている点です。ニュートンもカントもよく散歩をしたと言われます。歩くことで頭の中が整理され、突然ひらめきが訪れる。学問の歴史には、そんな逸話が数えきれないほどあります。


こうして見てみると、「壁にぶつかったときどう振る舞うか」は学問を続ける人にとって大事なテーマです。答えが出なくても、立ち止まって、歩いて、話して、また挑む。そうした姿勢こそが「研究者として生きる」ということなのでしょう。

私の好きな数学者の「歩く」エピソードを、自分のブログから紹介しておきましょう。

数学者とパン

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死んだふりの医学

「死んだふりをすると、血圧が下がりますよ」とおっしゃる御仁がいて、私は「どんな感じで?」と尋ねた。

すると彼は、左手にマンシェットを巻いた状態で、うなだれて全身を脱力してみせた。

ふふっその姿はまる私が血圧測定をしている姿勢とそっくりだ。

どうも自分も血圧測定時に死んだふりをしていたらしい──笑ってしまった。

血圧測定時、緊張するのかやや血圧が上昇してしまう患者にこれまで、呼吸の微妙なコントロールなど、毎回実行するには煩雑なリラクゼーション法を教えてきたけれど、案外「死んだふりをしてみれば?」と言えば十分だったのかもしれない。


自然界では、この「死んだふり」は生理現象として十分洗練され発達している。鳥類や小型哺乳類が寒冷や飢餓に耐えるために使う「torpor(休眠)」だ。体温と代謝を落とし、わずかなエネルギーで生を延命する。

2025年、ワシントン大学のHong Chen教授らは、このtorporを人工的に誘導できることを示した。マウスの視索前野に超音波を当てると、体温は3℃低下し、心拍数は約半分に落ち、糖から脂肪への代謝転換が起きた。自然の休眠と同じ生理変化である。そして驚くべきは、ラット──通常は休眠しない動物──にも同様の状態を起こせたのだ【Wu, Sunagawa, Chen, Nature Metabolism, 2025】。遺伝子にその仕組みがプログラムされているらしい。ならば人間も?と期待が膨らむのも当然だ。

関係ないが著者の一人は日本人。砂川玄志郎という名前だが、論文ではGenshiro A Sunagawaとあって日本人なのにミドルネームがある!アメリカ生まれなのだろうか。理研の先生でメールアドレスは公開されているので誰か聞いてくれませんか。

さてこの「synthetic torpor(人工休眠)」は、単なる実験の遊びではない。放射線被曝のリスクがある宇宙飛行、臓器保存、あるいは脳卒中など血流が途絶えた臓器を守る医療応用が視野に入っている。従来の医学は中心静脈栄養など「エネルギーを補う」ことに重きを置いてきたが、synthetic torporは逆に「エネルギー需要を減らす」方向から人を救おうとする。


そう考えると、あの御仁の「死んだふり」も、案外バカにできない。血圧計の前で腕を下げ、全身を脱力することで副交感神経は優位に傾き、実際に血圧は下がる。医学の最前線が探しているのは、より深く・長く・安全にできる「死んだふり」だとも言える。

死んだふりは冗談ではなく、人類が未来に進むための鍵かもしれない。そう思って実際、血圧測定を行うときにこう声掛けすることもその後何度もあった。

「力を抜いて、死んだふりしてください」

しかしそんなことを突然言われて「え?どういうこと?床に転がるべき?」と戸惑ってしまうというのがリアルな反応である。

Synthetic torpor has potential to redefine medicine


新時代の食卓はAIが作るのか

嘘を並べ立てて食事指導は出来るのだろうか、とある日思いました。

病院に入院した人々が必ず言う「ご飯(主食のこと)が多すぎる」ですが、きちんと栄養士さんが計算するとああなる、の典型ではあるものの、皆さんの目には「健康的」とは写っていない。

いや、病院食で確実に皆さん血圧下がってるんですけれど。

でも実際の食卓とは違うのも事実。では正解は?と考えたときに、病院で出す食事には「長寿に役立つ」という証拠がないなあというのも事実です。

現在日本人は長寿とされているものの、「幼少時に十分栄養が取れず、痩せていた」「高度成長期以後、感染症が減った」という身も蓋もない事実がその原因かもしれません。だとすればあと10年もすれば日本人の寿命はどんどん短くなる可能性もあるでしょう。

そこで論文を検索しまくって世の中で良いと言われている食事の要素を全部入れて、人工知能にメニューを作ってもらったら良いんじゃないか。

そんなことを考えていたら、(実際には人工知能が考えたら)こうなりました。


科学が紡ぐ革新:3つの食パターンを統合したい。

ヨーロッパ糖尿病学会(EASD)において発表された最新メタ解析によると、「地中海式ダイエット」「代替健康食指数(AHEI)」「DASH(高血圧予防食)」という三つの食生活パターンを高い順守度で実施した人々は、2型糖尿病発症リスクがそれぞれ 17%、21%、23%低いことが示されました(対象:約80万人)The Educated Patient

Several healthy diet patterns are associated with reduced risk of type 2 diabetes regardless of ethnicity – shows meta-analysis of more than 800,000 people

この結果は欧米、アジア、アフリカ、ヒスパニックなど、多様な民族背景において一貫して観察されたことが重要です。

だったらこの3つの食事の特徴を、いいとこ取りしたらどうだろう。

他にもある、学術的根拠

さらに、2014年のメタ分析では、地中海式食が2型糖尿病の発症リスクを最大23%低減することが示されています(著者:E. Koloverou et al., Metabolism: Clinical and Experimental, 2014)PMC。これも信頼の置ける文献による裏づけです。

また、地中海ダイエットと心血管疾患・死亡率の関係を検証したシステマティックレビュー&メタ分析は以下です:

DOI: 10.1080/10408398.2019.1565281(Nerea Becerra-Tomás et al., Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 2019)ResearchGate

「和地中DASH」をむりやり誕生させる。

和食が良いかどうか、はわかんないけれども一応リスペクトすることにします。なにしろ美味しいですし。3つの健康食+和食=「和地中DASH」 と名付けようと思いますが、もう少し良いネーミングもあるのではないか。とにかく、これら三つの科学的アプローチと、長年培われた和食の伝統を融合させます。

たとえば、雑穀米や玄米、青魚や大豆、海藻、発酵食品を中心に据えつつ、塩分は抑制。オリーブオイルやハーブで香味を補い、全体的に減塩と自然派旨味を両立させてます。

こうなると複雑で、人間の頭で考えるのは面倒だから全部人工知能に考えてもらう。

Amuse-bouche(はじまりの一口)

  • 発酵豆乳のエスプーマ 柚子とオリーブオイルの香り
    • 豆乳を軽やかな泡に仕立て、柚子皮とエクストラヴァージンオリーブオイルをひと雫。
    • 大豆イソフラボン+オリーブポリフェノール=血管と代謝の調和

Entrée(前菜)

  • 海藻と雑穀のタルタル アーモンドのアクセント

    • 海苔、ひじき、もち麦、キヌアを合わせ、柑橘の酸味で爽やかに。
    • 上には砕いたアーモンドを散らし、食感とビタミンEを加える。
    • 和の海藻と地中海のナッツが、酸化ストレスを抑える出会い

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Poisson(魚料理)

  • 相模湾サバのグリル ローズマリー味噌ソース
    • 地元漁港のサバを香ばしく焼き、減塩味噌にローズマリーを合わせた特製ソース。
    • 青魚のEPA/DHAが心血管を守り、発酵味噌とハーブが塩分を補わずに旨味を引き立てる

Plat principal(主菜)

  • 鶏ムネ肉の低温調理 枝豆とオリーブのラグー

    • 鶏ムネ肉を真空調理し、枝豆と黒オリーブを煮込んだソースでいただく。
    • 高たんぱく低脂肪の鶏肉+植物性タンパクの融合

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Garniture(付け合わせ)

  • 季節野菜とハーブのグリル レモンと胡麻油のマリネ
    • ナス、ズッキーニ、パプリカをグリルし、レモン汁と胡麻油で爽やかに。
    • DASHの減塩原則に基づき、塩を最小限に抑え、酸味と香りで満足感を演出

Dessert(甘味)

  • 抹茶と赤ワインのパルフェ ベリーコンポート添え

    • 宇治抹茶の香りをまとわせた軽いムースに、赤ワインで煮たブルーベリーをあしらう。
    • カテキンとポリフェノールの共演──「和」と「地中」の抗酸化ハーモニー

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適当に作ってもらったのでなんか偏っている気がしないでもないですが、買ってきた材料を入れて、冷蔵庫内にある調味料を入力し、1週間分の献立を上手に作るぐらいはわけなくやってのけそうではある。友人もChatGPTと少しだけやり取りすることは、カロリー計算が簡単になり、食卓が豊かになると教えてくれています。

実際には上記のような食事は腸内のガスが多くなります。お腹の弱い人達にはなかなか辛かったりするわけで、まだまだ人間の入る余地(プロンプトがとても大事)はあるよな、というのが正直な感想です。


薬が効いたかどうか、を人は「飲み始め」で判断する

多くの人は「飲み始め」で薬の効果を測ろうとします。しかし実際には、薬が効いたかどうかを評価することはずっと複雑です。

「効きませんでした」という言葉をどう扱うかという話にもつながります。

たとえば心窩部の痛みを訴える患者さんに薬を処方したとします。診察でこんな会話になることがあります。14日処方していて、来院したのは21日目。

「症状は?」
「~日までありませんでした」
「なるほど、お薬は効いたと思いますか?」
「わかりません」
「お薬はいつまで飲んでいましたか?」
「その前日までです」

薬を飲み終わって症状が再発してるなら、薬が効いたと判断して問題ないかもしれない。しかし、「お薬を飲まなくなった翌日に症状が再度出現したことが、お薬が効いていたことを100%証明するわけではない」ので、「わかりません」という答えも間違いとは言えない。

むしろ多くの患者さんは「薬は飲んだらすぐ効くはず」という思い込みに引きずられます。そのため、薬を中断して初めて「効いていたのかも」と振り返るのは難しいのです。

飲み終わり、で症状が変化することがあることに気づきにくい例をもう一つ。腰痛でロキソニンを処方されていた患者さんがロキソニンを終了した翌日から胃痛で来院することは多いのですが、ロキソニンのせいで胃が悪くなり、その鎮痛作用が切れたために胃の痛みが表面化したのだとは気づきません。

こうした認識のずれは珍しくありません。背景には、不安や複数の問題が重なって、冷静に判断できない状況もあり得ます。だからこそ医師には、患者の認知のバイアスを理解し、寄り添いながら説明し、治療方針を共に考える高度な判断力が求められます。

さて飲み始めにすぐ効果を感じなかったからと言って自分の主観だけで「効かない」と決めつけることは選択肢を狭めてしまいます。「わからない」と保留する姿勢はむしろ論理的であり、その後の検討や修正につながる出発点になるのです。


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