ブルーベリーは青くなかった / カメレオンの色変化はエコ / ロイシンに気をつけよ? / 結局読書 / おなら / 好酸球性食道炎
目次
ブルーベリーは青くなかった
「地球は青かった」と言ったのはガガーリンですが、青く着色されているわけではありません。レイリー散乱と言う現象で説明されています。
自由に外国人が旅行できない時代の某国で大きなイベントがあったときに、マスコミが通る道路周辺を緑のペンキで着色したという逸話がありますが、それが本当かどうかはわかりませんが、対人イメージとして、青とか緑は、黒とか灰色に比較すると悪くないから色をつけたかったんでしょう。その緑ですが、植物が緑に見えるのは意図的というよりは、光合成には不必要な緑色が透過あるいは反射されているからです。緑は植物にとっては不要な色、って言葉であらわすと逆説的でちょっと面白いですよね。
果物の色はクロロフィル、カロテノイド、アントシアニンなどの色素により色づいている事が普通です。捕食者に食べてもらい遠くまで運んでもらいたいから。しかし、色素とは違う機序で色づいているものがあります。ブルーベリーはその一つです。
関係ないですが、種は腸の中に長く残り大腸検査の邪魔になります。しかしこの仕組みも、捕食された場所からなるべく遠くまで運んでもらおうという知恵だとすれば納得の行く話です。なんと緻密な自然の仕組みなのでしょうか。
さて最近発表された論文を紹介します。
Self-assembled, disordered structural color from fruit wax bloom
この論文では、ブルーベリーが青く見えるのは、青い色素が含まれているからではなく、表面にあるエピクチクラワックス(植物の表面にあるワックス)のナノ構造による「構造色」がその理由だ、と説明しています。
そもそも色素は特定の波長を吸収する分子構造が着色の原理ですが、それより大きな構造が色を決定する、という事です。
そういえばブルーベリーの持っている色素はアントシアニン(赤紫)であるのに、青いよなあ……と思ったあなたは鋭いわけです。ジャムにすると赤紫になりますよね。
ところで構造による色決定、というとコヒーレンス(光の可干渉性)を思い浮かべたあなたは相当の科学オタクです。規則正しく並んだ分子構造によって光の干渉がおきると美しい光沢が生まれます。

Photo from Wikipedia
光の干渉により色づいている果物として、ポリア種やマルガリタリア・ノビリスなどが知られています。これらの果物は、表面や内部の微細な構造により、見る角度によって色が変わる場合があります。昆虫のモルフォ蝶も有名です。
構造色にはいろいろな発色方法があります。以下のページが参考になります。
光の干渉で研究で有名なレイリー卿(地球が青く見えるレイリー散乱を発見した人)も自身の論文で昆虫について言及しています。玉虫厨子に象徴されるように、昆虫の色は多くの人を魅了してきました。
さて、ブルーベリーの皮に存在するこのワックスは自己組織によって生成され、非球形の粒子がランダムに配列し、その散乱により色が生じます。ブルーベリーは熟すとアントシアニン色素が多くなりますが、これが青色の外観を決定するわけではないのです。
では、なぜ青と言う色をブルーベリーが獲得したのでしょうか。短波長の光(紫外線を含む)を反射する事で柔らかく傷みやすい果実を守るためではないか、とのことです。ブルーベリー(野生種)は北米に自生しますが緯度が高い地域であり、夏は長時間紫外線にさらされますし、暑くはないので赤外線は吸収してしまっても問題がない、と考えれば明るい色ではなく、暗い青である事は納得できます。現在我々が食べているブルーベリーの栽培種は実がある程度硬いのですが、野生種は非常に柔らかくてデリケートな実なのだそうですよ。食べてみたいですね。その実を守るためのワックス、なのだそうです。構造色となった理由ですが、青い色素は生物にとって大変高コストだそうで、それよりは構造で色を実現したほうがエネルギー的に有利だと言う考察がありました。
人間は青い薔薇の実現にも苦労していましたが、波長の短い色だけ反射して、波長の長いものは反射しないと言う分子構造は、大変手間がかかりそうだということは感覚的にわかります。古くから青い色素が大変珍重されてきた理由はその辺にあるのでしょう。青色LEDも一番最後でしたしね。
さてクランベリーが北米唯一の果物だ、みたいに過去のレターに書いちゃったのですが、カナダの先住民族はブルーベリーの野生種を食べていたみたいです。20世紀になってから栽培種が出てきたんですね。
カメレオンの色変化は、エコである
構造色でもう一題。カメレオンが体色を変える能力は、その皮膚の特殊な構造によるものです。これも構造色なんです。カメレオンの皮膚には複数の層があり、色素細胞が含まれています。これらの色素細胞が異なる方法で色を調節し重なり合うことで複雑な色の変化をもたらしています。このうち、表面に近い層にはグアニンのナノクリスタルを含む細胞、いわゆるイリドフォアが存在し、その構造変化が素早い色変化を担っている、と言う研究が発表されたのは2015年の事でした。(それ以前から爬虫類の色決定はグアニンのナノクリスタルによるものだ、という研究はあります)
Photonic crystals cause active colour change in chameleons
まず、グアニンのナノクリスタルを透過電子顕微鏡で見た画像を示します。左がリラックスした時の皮膚、右が興奮時の皮膚です。実際の皮膚を採取して素早く固定して観察しました。
画像はクリエイティブ・コモンズライセンス4.0です。(上記リンクに元画像)

クリスタルの距離が変わっているのがわかりますね。カメレオンはこれを浸透圧で調節しています。研究者は実際の観察とシミュレーションで色の変化について検討しました。
リラックスした時は細胞内の浸透圧は1416 mOsm程度まで上昇します。それは非常に濃い状態と言え、クリスタルの隙間は小さくなります。写真の左側です。
興奮すると236 mOsm程度まで下がります。つまり水分が流入した状態になってクリスタルの隙間は大きくなります。
このクリスタルはプリズムのように光を反射します。リラックスした状態では青くなり、興奮するとプリズムの距離が広がって赤くなる、と説明されています。

上の図は格子の距離が476nmだと赤く、294nmだと青く見えるというシミュレーション結果です。光の波長が短いのが青で長いのが赤ですから、なんとなくわかりますよね?
さてこれを工学で応用した研究が示されました。これはごく最近の論文。
Chameleons inspire new multicolor 3D-printing technology
3Dプリンティング技術には多数あるんですが、紫外線を使ったプリント技術があります。紫外線というのは微細なコントロールが可能で、例えば我々のスマホの心臓部は数nmという細い回路でできているんですが、このを実現しているのはごく短波長の光です。紫外線など短波長の電磁波です。
紫外線を使うとナノサイズの微細な模様をプリントできます。これを応用して、本来は色を持っていないマテリアルの表面に、微細なクリスタル構造をプリントして、色付けをするという新しい技術です。これはペンキを使わなくて済む、という点で優れています。環境破壊を少なくしたり、エコに貢献する可能性があります。応用範囲が広いと推測されますね。
ロイシンよ、お前もか
BCAAをご存知ですか。筋肉を増やすのに大切な分子鎖アミノ酸バリン、ロイシン、イソロイシンを指します。
BCAAは病後の回復のために非常に重要な蛋白質であり、プロテインをサプリメントとして摂るよりも効率良く体力を回復させられる可能性があるので、私も1日4gのBCAA摂取を推奨しています。
一方で、筋肉をしっかり作ることは、実験動物の世界では「長生き」とはあまり関連性がありません。実験動物ではひたすら「痩せろ」「飢えさせろ」が長生きのキーワードとなっています。
さてその文脈で考えてみましょう。
Diet breakthrough: Monash University researchers find simpler alternat
食事から必須アミノ酸であるイソロイシンのみを断続的かつ短期間で抜くと、体内では大切なタンパク質を何も作れなくなり、飢餓状態に突入するのです。この結果、ストレス耐性が大幅に向上し、寿命が延びることが判明しました。ただしショウジョウバエで。「どうしても食べたい」という肥満患者にイソロイシン抜きの食事を食べされば、ゴミを食べてるのと同じなんじゃないか、というそういう発想です。キャッサバばかり食べているアフリカの人がクワシオルコルという病気になるんですけど、まさにそれですな。間欠的にするのでクワシオルコルにはならないんですが。
そこに追い討ちをかけてきたのはこの論文です。
もともとタンパク質ベースの食事をしていると体に悪いことはわかっているわけですが、悪いのは主にロイシンである、という論文です。基本的に食事のカロリーの22%以上で問題が生じると。伝統的な和食では炭水化物:脂質:タンパク質のカロリー比は「6:2:2」ぐらいとされています。日本の栄養指導ではタンパク質は13−20%にしてくださいと指導されますし、米国では15%と指導されるそうです。高血糖の方には「4:2:2」を指導します。米国は非常に脂質を多く摂る人が多いのですがタンパク質をたくさん食べる人も多くて1/4は22%を超えてタンパク質を摂っているのだそうです。
研究者の言う通りにすると何も食べられなくなりますから、ネタとして読んでいただきたいわけですが、イソロイシンはカットしておけ、ロイシンは気をつけろ、だと何も美味しいものが食べられないなーと思ったりはします。
結局読書
デンマークのこの研究では、子供たちの就学前の言語スキルが何に一番左右されるのか、という事を見ています。
一般的に教育熱心な親は、本を読ませたり、あるいは読み聞かせたり、あるいは本の内容について子供と話し合ったりするようです。あるいはパズルであるとか。
例えば本の読み聞かせや、本を読むことには以下の特徴があるとされます。
- 親の教育レベルの差が出にくい教育方法である。親の教育レベルが高い場合、親は子供の意見を引き出す質問に長けており、命令口調が少なくなります。結果として子供の言語能力が発達しやすい。この差を少なくすることは大切なことで、読書は格差の縮小に寄与します。
- 本は文字主体であるほうが良く、絵本は言語発達を保証しづらい。(読み手のスキルに左右される)
また「思い出の想起」は言語能力を発達されることがわかっています。回想は、現在の状況から離れた内容になる(脱文脈化している)ので、言語として洗練されやすいからです。
おもちゃ遊びはこれらと比較すると言語発達との関連性は低いとされています。
そこで今回、155組の親子の様子をビデオに撮って詳細に検討し、上記の仮説を検討しました。デンマークなのでおもちゃはLEGOでした。結果としては回想が最も就学前の言語スキルに寄与した、という事でした。(注:デンマークは既存の研究が多い米国と比較すると教育や経済格差は少ない国ではあります)
さて親子間の会話は、3つの側面で捉えられます。
- 言語的側面:子供だからと簡単な言葉や文法を選ばずに豊かな語彙、表現で話しかけた方が良いらしい。
- 対話的側面:子供のアクションに親が反応する、偶発的な反応頻度が高いほど子供の言語能力が発達する。
- 概念的品質:現在の状況や場所から離れた内容(非現実的な話題)についての親の会話の頻度が、子どもの言語発達に正の影響を与える。現実から離れた内容になった場合は、文の品質が上がるからだと考えられています。
さて今回の研究では、今までの報告とは異なり文字だけの本のみならず、絵本も言語能力の発達に寄与していたとのことです。
ただし本の読み聞かせや内容の共有よりも、親子間で回想をすることが最も重要な因子であったとのこと。困ったことにこれは親の教育レベルで差が付きやすい傾向がありました。すなわち子供が過去に発言した内容を踏まえて会話を展開したり、より豊かな語彙や複雑な文法を用いる傾向が高学歴の親にはあって、これは子供の言語発達に影響を与えてしまうのです。格差問題がここに。
ただ、これは必ずしも残念な結果とは言えません。昨今の人工知能は平均的な人間をはるかに超えた文章のやり取りが可能であり、それの力を借りれば豊かな言語能力の発達を引き出す事が出来るのではないか、とも考えられます。
ところで「言語化は課題を解決してくれる」と自分はよく言います。医者の仕事は物事を言語化することであり、あるいは患者さんが物事を言語化できるように手助けする事です。正しく言語化できれば勝手に診断はつくし、治療はできずとも折り合いをつけることが可能になります。
そこで患者さんとの会話の品質が大切になるのですが、これは親子間の会話の質と同じ軸で考えれば良いだろうと思います。すなわち、豊かな言葉を使って話しかけ、患者さんの話の内容に上手くリアクションし、文脈とは異なる内容(病気の説明などはそれ)を話します。
さて、言語能力が発達した患者さんは、「前回の外来ではこういう話し合いをしましたね、その後こうなりました」という事を、私が問いかける前からとても上手に話してくださいます。こういう方はどんなお医者さんにかかっても、その先生を名医にしてしまいます。名医を探さなくて良いわけだから楽なんです。
さて就学後に言語能力を発達させるには、自分よりも高い能力の人々との会話が一番手っ取り早いのですけれど、なかなかそういう環境は難しいので読書が一番良いと思います。
おなら(総論)
おならの成分のうち、変動するのは、大腸で微生物が発酵する際に発生した水素、二酸化炭素、メタンなどです。
しかし空気を飲んでどーのこーのと議論しているメディアはありますね。
鎌倉の内視鏡クリニック
オムロンのサイト
どこかの歯医者さん
Ubieという問診ソフトの会社
日経新聞
申し訳ないんだけど、彼ら理解して書いてるのかしら?と思いながら読みました。サルでも嘘だとわかるんじゃないかと思うような内容も書かれていて驚きました。もちろん根拠がなく、文献が全然見当たりません。恐ろしい恐ろしい。
おならに飲み込んだ空気が寄与する割合は少ないので、その議論をすべきではありません。面白がって嘘を書くことは悩んでいる人を傷つけることにもなるし、あまり良いこととは思えません。
さておならのうち、飲み込んだ空気がどのくらいかを証明するのは簡単で、おならの中の窒素量を調べれば良い。
Investigation of normal flatus production in healthy volunteers.
正常なボランティアのお尻にカテーテルをつっこんでおき、24時間おならを収集した論文です。意外と漏れなく収集するのは大変なんですよ。うんちの時どーすんだとかですね。
さて結果ですが、おならの1日の総量は 476 ~ 1491 ml (中央値 705 ml) の範囲でした。中央値で書いてあるときは「個人差が激しい」ことを示しています。当然か。
男性と女性は差はありませんでした。
睡眠中のガスは少なく、食後にガスは多くなりました。
繊維を含まない食事を48時間食べると大幅にガスは減少しました。
水素が最も多くて361mLでした。窒素は213mLでした。メタンは10人中3人が産生しました。へー全員じゃないんだ。メタンは古細菌が産生するから、全員が持ってるわけじゃあないんですね。二酸化炭素はたくさん腸内細菌により作られますが、多くは吸収されてしまいますよ。
まとめるとおならの成分は、50%が水素で、30%が窒素です。つまりおならのうち、飲み込んだ空気は30%程度です。酸素は吸収されやすいし好気性菌に使われるのであんまり残らないと思います。残り20%は二酸化炭素とか少しの酸素とかメタンとか匂い成分なのでしょう。おならは燃えるんですが、主に水素によります。別の論文では飲み込んだ空気由来のおならは25%程度です。
人間が飲んだ水の量と同量の空気を飲み込む(これも嘘だと思うけど、すごく多めにしておく)と仮定すると、2000mLの空気を飲み込んで、ゲップとしては1550mL排出され、残りの450mLが腸に流れていき、おならになる、と考えれば良いでしょう。
空気を飲んだ結果としてのおならの量にはあまり個人差はなく、空気を飲むかどうかでおならを語るのは科学的ではおそらくありません。だからこの議論はここまでにします。
おなら(文学)
20世紀最高の文学とされている「ユリシーズ」を読んだら死のうと思ってたんですけど、そうも行かなくなってきて。
ジェイムズ・ジョイスはアイルランド出身で20世紀で最も重要な作家の一人です。「ユリシーズ」(1922)がよく知られていますが、1914年に「ダブリン市民」、1916年に「若い芸術家の肖像」を発表しています。
SF作家H・G・ウェルズが1917年、この作品(若い〜)におけるジョイスの「肛門への執着」を嘆いたことは有名だそうです。ウェルズのこの表現は、ジョイスの作品における生理的、または下品と見なされる詳細への注意と描写に対する不満を示しています。しかしウェルズ自身優生主義者で偏った考えの持ち主ですから、むしろジョイスのそういう点が特に優れているのだ、と解釈して構わないと思います。
エズラ・パウンド(米国の詩人で、困窮するジョイスを支えた)は、ジョイスの「作家としての誠実さ」を称賛しつつ、『ユリシーズ』の「排泄に関する表現」には無関心を装っています。むしろ彼は一連の排便に関する言及の削除をジョイスに提案してもいます。
リアルな排泄、そして匂いに脚光を当てたという意味でもジョイスは歴史上極めて重要な人物です。彼の研究者はジョイスの匂いフェチぶりが何故なのかを議論しています。研究によればジョイスは自分の作品で、匂いをいかに言語化するかに情熱を捧げる一方で、書簡などではある種の諦めを示している、との事でした。
ということで、自分はジェイムズ・ジョイス作品を読まねばならなくなりました。
おなら(匂い)
おならの悪臭の原因はほとんどが硫黄化合物によります。硫化水素が多く、次にメタンチオール、少量の硫化ジメチルが含まれます。
おならの悪臭の原因はほとんどが硫黄化合物によります。硫化水素が多く、次にメタンチオール、少量の硫化ジメチルが含まれます。この硫化物の原料はシスチン、システイン、メチオニンというアミノ酸です。これらは硫黄原子を含み、含硫アミノ酸と呼ばれます。
魚臭症、というまれな病気がありますが、これは尿などが匂うものです。
食物ではシステインの役割が大きくて、これを多く含む食べ物ではおならが臭くなります。システインは肉、魚、卵、ネギ類(タマネギ、ニンニク)、アブラナ科の野菜(カブ、カリフラワー、キャベツ、コマツナ、ダイコン、チンゲンサイ、ハクサイ、ブロッコリー)に多く含まれるとされています。しかし食べないのは良くないです。硫黄は生命維持のため非常に重要な成分であり、きちんと摂るべきだということは意識をして下さい。
通常は食べてもシステインは吸収されます。しかし食べ物のアミノ酸が十分に消化吸収されなかったり、小腸ですでに発酵が始まっているような場合に硫化水素が増加します。したがっておならが極端に匂うという場合には「過度に摂りすぎている」「消化吸収に問題がある」などの問題があるので、十分に自分でお考えになってみて下さい。経口ジサリチル酸ビスマス(ペプトビスモール:米国ではありふれた市販薬です)および活性炭を含む臭気低減外部装置(お尻に活性炭入りのスポンジを入れるらしい)は、腸内ガスに関連する臭気の低減に効果があることが示されています。
おなら(量)
プロバイオティクスとリファキシミン(抗生物質)は、おならの総回数とそれに伴う不快感を軽減することが示されています。経口α-ガラクトシダーゼ(乳糖不耐症の薬)は、発酵性炭水化物や高繊維食に関連する腸内ガスの量を減らすことが示されています。。経口活性炭とシメチコン(ガスコン)に関する証拠は一貫性がありません。
水への気体の溶解率を議論した論文もあります。水分を十分に摂らないとガスは多くなるはずだ、というものです。また同じ文脈で言えば腸の動きが活発であるほど気体としてのガスは存在しにくいはずです。
FODMAP(フォドマップ)は、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称で、以下の頭文字を合わせた言葉です。
- Fermentable(発酵性の)
- Oligosaccharides(オリゴ糖)
- Disaccharides(二糖類)
- Monosaccharides(単糖類)
- And
- Polyoles(糖アルコール)
食物中のFODMAPが多いほどガスが多くなります。実験でガスを増やしたい時は欧米では必ずお豆主体の食事にしますが、これは高FODMAPだからです。活発に腸で発酵が起きることは健康的なのですが、量が多すぎる場合は問題になります。
おならの量が多く困っている場合には以上を鑑みて、
- プロバイオティクス
- 抗生物質(日本では保険で使用できない)
- 静菌的なサプリメント(オレガノ、タイムなどのハーブ系が多い)
- 水分の摂取
- 運動
- 腸管運動を活発にする薬
- 消化剤(βガラクトシダーゼは日本では保険で使用できない)
- 低FODMAP食
- 便移植
がその治療ということになります。
おなら(生活習慣)
おならが多すぎて気になる場合、避けるべき生活習慣としては以下のものがあります。上記の文脈より、自ずから導かれる結論です。
- 早食い
- 食べ物をきちんと噛んでいない
- チューインガム(キシリトールが多い)
- 他のキシリトール入りの飴など
- 運動不足
- 食べ過ぎ
- 高FODMAP食
おなら(病気)
おならが多すぎる場合、以下の疾患である場合もあります。
- 便秘
- 過敏性腸症候群(IBS)
- セリアック病
- 消化液の減少(慢性膵炎や肝疾患も含まれる)
- 乳糖不耐症(多い)
- 吸収不良症候群(小腸側に問題がある場合)
- 胃腸炎およびジアルジア症などの寄生虫症
当然他の症状があるので、「おならだけ」で上記疾患を疑うことはありません。
おなら(相談)
- 水素呼気試験を備えた専門外来は日本には見当たりませんから実力が疑問ではありますが、SIBO外来とか検索してみてはどうか
- 何かのついでの僕に相談しても上記以上の知識はありません
- 何かを発見した場合にはどうぞご報告下さい
好酸球性食道炎最近の話題
好酸球性食道炎は、他院では見逃されやすく鵜川医院では見逃さずに発見されやすい病気で、世界中で増加傾向にあります。当院では見逃さないと書きましたが、胸焼けなどで発症してから正しく診断されるまでに6年もかかる、という論文があるそうです。最初の内視鏡が重要です。
小児では食道の狭窄など強い症状で発症するのですが、大人では20年ぐらいかけて徐々に狭窄が進行するため、あまりメジャーな病気ではありませんでした。ただ結構多い印象はあって、当院の経験では5年10年無症状の方もおられます。
食道のアトピー性皮膚炎のような病気ではあるので、痛みを感じる人がいます。かゆみと痛みは本質的には同じ感覚です。30歳以上の男性に特に多いとされますが、男女両方に見られます。日本ではプロトンポンプ阻害薬を使って食道粘膜が二次的に傷つくのを防ぐぐらいしか治療法がありません。あるいは副作用を覚悟してステロイド。
世界ではどうかというと、デュピクセント(IL-4受容体拮抗薬)が使えますし、ヨーロッパで使われている経口ブテゾニド(成分はパルミコートと同じです)が2024年2月に米国でも承認されています。他のアトピーに使う薬も軒並み治験中ではありますし、潰瘍性大腸炎の新薬であるエトラシモドも効果があるとの事です。
除去食での治療が行なわれることがあるのですが、アトピー同様なかなか難しいため、投薬主体になるのかなと思います。個人的にはバイオアベイラビリティが低いリボスチン経口、みたいな薬はどうかなとか思っていますが。
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