マスク / 笑い / スポーツ雑感 / 災害対策 / 黒胡椒 / カルテ略語 / 電子レンジ / 遠隔診療
目次
普通のマスクは呼吸器症状を25%予防する
症状がない人がつける普通のマスクは「単に飛沫を防ぐ、あるいは自分が気づかずに感染している場合に人にうつさないため」という意味が主体で、風邪を予防するためではない、と理解しています。利他的行動とも言える。
予防したいならN95マスクじゃないと。
でも、多少は予防効果はあるんじゃないの?と誰でも思いますよね。否定する研究が結構あるのですが、今回BMJに掲載された論文では厳密に風邪にかかったかどうかじゃなくて、「なんとなく風邪引いたかも」と思ったかどうかを調べています。
さて論文の内容、ビジュアルアブストラクトにまとまっています。とても良い試みだと思います。軽い気持ちで読んだのですが、実は医療哲学的にチャレンジングな論文だとわかります。というのも、プラグマティックRCTというタイプの、2017年ごろから認知されてきた手法による試験であるからです。
試験に参加する人々の心理的肉体的ハードルを下げるために簡単になっているのが特徴で、実社会での行動を妨げないようにしつつ、意思決定に役立つデータが出るようにデザインされるのが特徴です。いいですね。

このプラグマティック RCTのひとつにSTOP CRC試験というものがあります。この論文で、患者さんが便潜血検査をちゃんと受けるかどうかは、患者さんのせいではない、ひたすら「まだ便潜血検査を受けていない患者さんをデータベースから選び抜いてきちんとお便りを送付しているか」という医療センター(日本では行政)側のDXスキルに問題があるからだ、というたいへん厳しい結果が示されています。いやほんと、来てくれた人に無駄な検査ばかりして、来てくれない人にアプローチをきちんとしないとか、実績目的で受診率を上げようと高齢者狙い撃ちする現在の検診って罪なんですよね。
また、同じプラグマティック RCTにAsthma Salford Lung Studyというものがあります。これは20年ほど使われてきた1日2回のICS+LABA吸入薬であるアドエアを使っている患者さんに発売前の1日1回タイプICS+LABA吸入薬レルベアを使ってもらった試験です。数十人〜数百人に使ってみて「非劣性だ(従来の薬と比較して劣ってはいない)」を示して発売する、が従来の薬の試験ですが、プライマリケアの場で広く使ってもらいどうだったのか、を比較しました。結果はレルベアが良かったという事で、プロモーションにも役立ちそうな臨床試験となりました。両方とも同じGSKの薬なので、より高いレルベアにスイッチしてほしい、が会社の本音でしょう。しかしいまだにアドエアのほうが売れているとか。この手の試験は公共には役立つが私企業には今ひとつかもしれないと認知されたかもしれず、似たデザインの試験は以後ありません。
プラグマティズムという言葉だけ知っていた自分にとっては、プラグマティズムの3つの側面、そなわち功利主義的、実証主義的、心理主義的の具体的な現代への影響が今ひとつピンと来なかったわけですが、そのうちの実証主義的な側面が医学の世界で登場してきているんだなあみたいな感想を持ち、理解が進みそうではありました。NEJMにレビューがあります。
軽い気持ちで読み始めた論文から思わぬ流れでたくさん勉強する羽目になることは良くあって、「まいったな」などと思いつつも避けては通れませんね。話を元に戻しましょう。
今回の論文によりますと14日の間になんと12%の人が「あーなんか咳が出るかも」と思うらしいんですね。多すぎませんか。面白いですね。それで、不織布でできたサージカルマスクをしていると、そういう人は9%に減るんだそう。つまり1/4ぐらい症状が予防できている。有意差あるそうです。
心理的効果も加わるんでしょうが、サージカルマスクはなにかしら症状の予防にはなっているということがプラグマティックRCTで示されたということです。1/4ってなんとなくいい感じの数字です。利他的行動でありつつ、自分にも利益がある。
さあ、この論文の結果を受けて皆さんはサージカルマスクをしますか?
病院で「症状がない人もマスクを」とお願いされるのはもっぱら「症状がない人からの飛沫から、免疫系の脆弱な人々が感染しているケース」を減らしたいからで、利他的行動をちょっとばかり強制されているわけですね。どうぞご理解くださいませ。(病院というのは、自分の命を守るために利己的行動をとって欲しいし、一方で利他的にもふるまってほしいし、まことに複雑な場であると思います)
武器としての笑い
よく、笑いには癒し効果があると言われます。どうして?
以前どこかの学会で日本笑い学会の副会長昇(のぼり) 幹夫先生の話を聞いて、なんとなく納得した覚えはあるんですが、講演の内容はまるで覚えていない。
しょーがねーな、何から勉強するんだ?と考えて、読んだのがベルクソンの「笑い」です。これについては以前のレターで言及しました。
その時はまだ飯沢匡の「武器としての笑い」は読んでいなかったのですが、その後読みまして、ベルクソンの「笑い」の延長線上に飯沢の笑いがあったのだ、と確信するに至っています。いわゆる「喜劇」の形を逸脱していない。ベルクソンの「笑いの場にあるもの」の定義を再度書きますと、①人間的であること、 ②心を動かされないこと、 ③他人との接触が維持されていること、です。特に②が重要で、それが嘲笑的な笑いであっても、感動的な笑いであっても、単にギャグに爆笑している場合であっても、笑っている人の心、気持ちは微動だにしていない、という事実がある。
つまり虐げられている、支配されている人々が「笑う」ということは、「我々は大丈夫だ、何も変わってはいない」と表明することであって、それは権力者に対する大きな抵抗になると言えます。それが飯沢匡の言う「笑いは武器になる」という事です。戦争中においては戦争を進めようとしている日本の支配者に対して笑いで抵抗、戦後においてはいろいろな抑圧に対して笑いで抵抗した、という事を飯沢匡は主張しています。
人を馬鹿にする、弱いものいじめのような笑いもあります。それはそれで他人を虐げる事で自分たちの立場が安定する手段として笑いを利用している。色々な使い方があります。
飯沢匡は戦争反対、反権力、リベラルな表現をするのに「笑い」あるいは「風刺」が大変有効であり、自分は終始実践してきた、という自覚が非常に強い人です。そして子供向けの笑いに戦後取り組んでいましたが、「検閲が入りにくい」という理由で仕事がしやすかったとも書いています。
他人との接触に関しては、飯沢匡が深く洞察していたかどうかは、本からはわかりませんでした。彼の喜劇は、彼自身認めているように役者を選ぶらしく、ある意味他者との接触に関してデリケートだった可能性はあります。
さて、ストレスで自我がぐらぐらの状態になってしまったり、大きな苦しみがあると、笑いは失われてしまいがちです。そして癒しには、①人間的であって、②心が安定して、③他人との接触が維持されている、という側面があり、ベルクソンのいう「笑いの場にあるもの」と大変似ています。
外科的治療とか薬とかリハビリとか心理的サポートとか経済的サポートとか芸術とかいろいろな癒す手段がありますが、笑いもやはり大切なんだろうなと思った次第です。武器にもなりますし。そんな事を書いた自己啓発本もたくさんありますね。啓発本をわざわざ読む必要もないでしょう。2−3行で済むような内容だと思いますので。むしろユーモアをどのように身につけるかみたいな部分で悩んでいる人が結構いるから本が売れるのかな。
ユーモアに関しては、ターゲットの把握、メタな思考、言葉の勉強が本質で、背景に気分の安定感があるのでしょうけれどそれが難しいので、「おれのフレームワーク」がいっぱい作られ啓発本化すると思われます。
スポーツ雑感
自分を表出するのに大切なスキルとして「詩」があり、その延長線上にアートがあります。一方で「スポーツ」も同じく自己の表出という点でアートと同等に評価されています。少なくとも現在行われている教育の価値観ではそうです。アートやスポーツで優れている人は学力が優れているのと同等の評価を受けて大学に合格しますね。
教育という文脈で2つに見られる共通性は、①人間としての成長、②自己表現と他者との関わり、③レジリエンスの強化、④宗教や文化を超えるもの、⑤創造と革新、⑥様々なレベルの協調性/リーダーシップ、⑦感受性の強化、⑧課題解決の繰り返し、でしょうか。違いはルールがどれだけ厳密か、かもしれません。スポーツではルールが非常に重要ですから、(俳句では破調が認められるけれどスポーツではそれはない)会社のルールにも従ってくれるんじゃないか、みたいに評価される傾向はあると思います。従順かどうかで評価するのはどうなのかしらとは思うのですが。
さて、課題解決に慣れているという事がありますね。アートやスポーツに関して優れている場合、他の分野でも頭角を顕すケースが多いので、就職で有利な場合も多いです。
頭角を顕す、で思い出したのが2024年8月時点でスポーツ庁長官の室伏弘治さんです。お父上の「アジアの鉄人」室伏重信さんがすでにスポーツを科学する人だったので、現在の展開に驚きはないのですが。友人の話では室伏長官に論文を書くスキルをアドバイスしたところ、深く身体を理解している方なので、すごい勢いでアイディアを創出し学術論文を書いてくるので驚いている(現在進行形)とのこと。これは以前のレターで少し詳しく書きました。
別の友人からも室伏さんの事を聞きました。2024年2月のニュースで、「スポーツと武道の魅力発信 室伏広治スポーツ庁長官がシンガポール訪問」というのがありまして、同行しておられたのが日野晃さんだそうです。報道からじゃわからない情報をいただける友人に感謝です。
この様子をブログに書いてくださった現地の方がいます。
- 自分の感覚を大切にしつつ、それを客観的に見ることが重要
- 子供は自らわかっている事が多く、その言語化を助ける事が教育
- 練習を強制せず、自発的な運動欲求を重視する
- 師弟が共に学び、対等な関係で解決策を見出すことが重要
と、とても大切な事を伝えている様子。
当日の日野晃さんのブログでも雰囲気はわかります。以前対談もされていますね。
二人は武道とスポーツとの融合の可能性について話しています。例えば道具を大切に扱う事は室伏さんの場合にはパフォーマンス向上につながったと強調しています。また、武道やスポーツにおいては筋肉だけでなく、皮膚感覚や体の動きを通じた身体感覚を鍛えることが重要で、特に武道を通してそういう感覚は磨けるのではないか。精神性に関し、自然体で競技に臨むことを学ぶ事ができたり、自己評価の姿勢も武道に学ぶべきことが多い。
【超人×達人】室伏広治スポーツ庁長官×日野晃師範 特別対談「武道で己を知る!」 Murofushi Koji and Hino Akira “JAPAN BUDO POTENTIAL”
同じ友人から教えてもらったのが舞踊家フォーサイスと武道家日野晃さんの対談本で、白水社『ウィリアム・フォーサイス、武道家・日野晃に出会う』です。押切伸一さんがまとめています。同じ身体を理解するもの同士が語り合うことで、漠然と理解していた事が言語化されフォーサイス・カンパニーの団員たちに伝わっていく様子がとても心地よい。
インターネットで見たエピソードですが、室伏さんがモデルさんに「どうすれば綺麗な筋肉がつけられるか」等の質問を受け、数回歩いた姿を見ただけで、筋肉の動きの説明や改善方法などをわかりやすく説明されていたとのこと。
新聞紙を手で丸める事で感覚と運動の両方をトレーニングする手法を紹介したり、非常に精力的に活動をされています。以下は、新聞紙を丸めて手先の感覚を養う体操の紹介動画です。
腰痛・肩こり予防&むくみ解消!室内でできる世界一ラクなトレーニング
今回のパリオリンピックには15000人のオリンピアンが出場しました。これからパラリンピックがはじまりおそらく5000人弱の人々が出場するでしょう。障害を持ちながらスポーツをすることもまた、課題を解決しながらスキルを伸ばすというスポーツの本質に迫る行為ですので、注目したいと思います。
災害対策と旅行支度
当直をする人生だったので「泊まり支度」がパッケージしてあり、ある程度長い旅行時もそれを持っていくだけで済みました。たまに点検は必要ですが、お薬についてはローリングストックが行われますし、災害にもそのまま対応できるとは思うので、自分のポーチの中身を共有しておきます。出張が多い方はきっと同じようなセットがあるはずで、もしもお勧めがあれば共有してください。
ケース
化粧品のノベルティとしてもらったものを20年以上使っていますが、なかなか同じものが見つからないからというのが使い続けている理由で、そのぐらい便利です。自分のアルゴリズムに合ったものが見つかるはずなので探しましょう。自分のはそのままハンガーにかけられ、「ハンガーポーチ」などと呼ばれています。こういうものですが、もう少し大きくてたっぷり入る仕様です。
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外用薬を入れる場所、内服薬を入れる場所、そしてその他を入れる場所になっています。
外用
ミニ救急箱と言えるので、救急箱の一部がそのまま入っている感じです。消毒、絆創膏、ステロイドの軟膏など。他に自分が普段必要なものがあれば入れておくと良いでしょう。綿棒などもここかな。
内用
抗アレルギー薬など常用しているもの、アセトアミノフェン、お腹が痛いとき使う薬、風邪を引いた時に使う薬(自分は総合感冒薬は使わない)、吐き気どめ、他自分にとって便利な薬が用意してあります。自らの経験から選択するのは、病気になったことがない、病気の人をお世話した事がない人には無理ですから、家族や親戚、お友達と話題にすると良いですね。
その他
電動歯ブラシ、電動髭剃り、歯磨き、デンタルフロス、マウスウォッシュ、日焼け止め、デオドラント、爪切り、虫除け、サニーナなどが入っています。電動で動くものは乾電池式にしてあります。ある程度軽さを重視したくて、容器を入れ替えたりはしています。それでも電動歯ブラシは譲れなくて入れています。
メンテナンスとアップデート
面倒くさがりの自分でもそこそこ出来てはいます。女性はもしかすると化粧品など大変なのかもしれないので、ミニマルなお肌ケアセットを普段考えておくと良いかもしれないです。
黒胡椒
みなさんは黒胡椒を使い分けた事がありますか?自分はありません。そりゃあコーヒーであれだけ違いがあるんですから、色々種類があって使い分けそうだとは思います。でも現実的じゃなくて。
料理店の口コミサイトを見ていたら、鰻の蒲焼を注文する時に必ず「山椒の産地」を店員に聞く人がいて、答えられない場合は評価を下げるポリシーを持っていました。小煩い客で嫌だなと思ったんです自分は。食べてみて「この山椒は素晴らしいけれど、和歌山の有田川産?高知産?どこから仕入れているのか伺っても良いですか」と聞くなら良いのですが「これはどこの山椒?」と食べる前に聞くのはどうなんでしょう。特定の組み合わせを料理人が好んでいるならばもちろんその念持、狙いを伺うのは楽しいけれども。
さてスパイスにはどうしても品質にばらつきはあるでしょう。その微妙な違い、それを吸収して安定した香り、味を作り出すのもレシピのマジックではないかとは思います。カレーでのスパイスの配合はそうでしょうし、例えば漢方薬の多くに甘草が入っているのは、そういう事だと理解しています。
さて料理の動画を見ていたら、「このカルボナーラに胡椒は何を使いますか?」の質問にイタリア人シェフがロングペッパー、サラワクペッパー、カンボジアペッパーを使うと即答していました。全部知らないので人工知能に尋ねてみると色々ありました。
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Long Pepper (ロングペッパー):
ロングペッパーはヒハツという名前で日本では売っている事が多いようです。通常のブラックペッパーとは異なるスパイスで、主に南アジアで使われています。独特のスモーキーな香りを持ち、沖縄でも使用されることがあります。確かに沖縄物産展行くとあるし、買ったこともあるんですが香り覚えてません。
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Cambodia Pepper (カンボジアペッパー):
カンボジアペッパーは「カンポットペッパー(Kampot Pepper)」のことを指すと思われます。カンボジアのカンポット地方で栽培されるペッパーで、品質と風味で知られています。内戦で畑が燃やされ手に入りにくかったのが最近復活とかなんとか。良かった。
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Sarawak Pepper (サラワクペッパー):
サラワクペッパーは、マレーシアのサラワク地方で栽培されるペッパーです。風味が豊かで、いわゆる高級ブラックペッパーの代名詞。
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Tellicherry Pepper (テリチリペッパー):
テリチリペッパーはインドのケーララ州の高品質なペッパーで、大きな粒と強い香りが特徴です。
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Malabar Pepper (マラバールペッパー):
マラバールペッパーはインドのマラバール海岸で栽培されるペッパーで、強い香りと辛味を持っています。
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Lampong Pepper (ランポンペッパー):
ランポンペッパーはインドネシアのスマトラ島で栽培されるペッパーで、スモーキーな風味が特徴です。
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Vietnam Pepper (ベトナムペッパー):
ベトナムは世界最大のペッパー生産国であり、強い辛味と香りで知られています。
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Tasmanian Pepper (タスマニアンペッパー):
タスマニアンペッパーはオーストラリアのタスマニアに自生するペッパーで、ユーカリのような香りが特徴とのこと。ブラックペッパーとは異なる植物で、日本で買うととても高額です。
輸入スパイスは残留農薬や重金属の検査などが大変なので、小ロットで輸入して面倒を回避するか、あるいはきちんと大規模に行うしかないみたいな事を以前聞きました。そのせいでカレーのチェーンは量が中途半端になるので独自にはスパイスを輸入せずエスビー食品にスパイスの配合をお願いしているとかなんとか。胡椒に関しても共通の規格がないようです。
香辛料の輸入手続き:日本 | 貿易・投資相談Q&A - 国・地域別に見る
香りの差、味の差を今まで意識した事がなかったので、今後ちょっと気を付けてみようかなぐらいの事は思いました。家にある黒胡椒はマレーシアでした。このイタリア人シェフは動画の中で、いかに安定した味をお客様に届けるかに苦心されていて、例えばカルボナーラの卵黄はあらかじめ68度で調理してペーストにしてしまう事で、全員に常に同じ味を提供できるような工夫をしていました。またペコリーノロマーノの塩分がきついので使用量は厳格に決めているとのことでした。たくさんの人に安定した味を届けるために優先させるべき事があるようです。
自分の場合、料理そのものよりは、それが料理の皿であっても本であっても動画であっても今自分の目の前にある意味が気になります。その中でビジネスモデルを考えたりするし、商品の安定性とか安全性とか科学的側面に興味が向いてしまうのもいつものことです。
スパイスに関しては輸入がほとんどですから防疫や食品安全と切り離せない問題ではあり、「輸入食品に対する検査命令の実施について」で検索してみると毎月のように事例があることがわかります。こわいこわいと思わず、水面下で我々の生活は守られている、という事を意識していただいて、それが科学を信頼するきっかけになって下さるといいなと思います。
胡椒については赤とか白とか黒とか緑とか、色の側面から書いても楽しいかなとは思いましたがとりあえず今回は「へー、プロは胡椒を使い分けてるんだー、でも多分自分はわからないまま美味しい美味しいと食べそう」と感心した、という話でした。ちなみにギョーザには酢とこしょう派です。
カルテに書く略語について
素早く見通しの良い記録を書くために、カルテには略語を多く使います。その中には謎なものもあって、例えばXQという略語は、父が使っていたものをそのまま踏襲しています。胃カメラの意味です。
通常はUGIとかEGDと書くのです。なぜXQ?オリンパスの上部内視鏡の商品名がGIF-XQ200のような感じだったからじゃないかな?と想像しています。Qは目に入りやすい文字で、とても良いのです。
「RUQ」という単語をカルテに書くのが好きですが、これも主に「Q」のかっこよさによります。
「Right Upper Quadrant(RUQ)」は、人体の腹部を4つの部分に分けたときの右上の部分を指します。具体的には、肋骨の下からおへそのラインまでの範囲の右側部分です。と、ChatGPTは言います。もちろんQuadrantのQuadは4の意味であって、学生時代に習った「第1象限」の象限がQuadrantなわけだから、ChatGPTが正しいんですが、医学ではあえてお腹を9つに区分したときの左上、という理解です。俺理論じゃなくて、以前からこんな感じなんですよ。

この領域には、いくつかの重要な臓器や構造が含まれており、主なものに、
- 肝臓の大部分
- 胆嚢(胆汁を保存する袋状の臓器)
- 膵臓の一部
- 小腸(十二指腸)の一部
- 右結腸の一部
があります。
さて「お腹がときどきすごく痛い」「お腹のどのへん?」「この辺り」「いつごろから?」「前から」という患者さんがいてちょうど右上を指している。カルテに「RUQの痛み for long」と書けたので自分はとりあえず満足をしました。あんまり重要じゃない、あるいは後から訂正されるかもしれない曖昧な情報をあえて英語風に書いてみる、というのも一つの自分流記述テクニックではあります。
さて、この方。あちこちの病院で、上部内視鏡検査、下部内視鏡検査、CT、MRIなどをして、「わからない」とされたんだそうですが、そんな事(わからない)があるんでしょうか。写真は持参していない。
「わからない」と医者に言われてしまう場合、それはコミュニケーションに問題があったという事を示すことが多い。医者と患者、お互いに共有される情報が少なく、双方遠慮がちであり、かつどちらかあるいは両方に十分な時間がなかった場合、「わかりませんね」で終わるのです。
お薬手帳を見ると経過の一側面は正確にわかります。例えばRUQの痛みに対してPPI、FDの薬を使ったというような事。PPIとかFDも全部略語でごめんなさいね。長く書いてもきっとわからない言葉なので省略。注釈は入れておきました。
検査で本当に異常がなかったとしても否定しきれない病気、例えば胆道ジスキネジアという病名はあって、試しの薬を普通は処方するのではないか。(他にも考えられる病名はいくつもあります)でも十分なコミュニケーションが不足したために「わからないです」という説明になった可能性が高いと思います。
教科書通り診断が進めば結局前の病院で治るはずですが、ひょっとすると、最初に「心窩部痛(みぞおちの痛み)」と医者が理解していると永久に正解に辿り着けない可能性があります。それほど「お腹の中でどの部分が痛いか」は大切な情報です。RUQと書く事はかっこいいだけじゃなく、「間違わない効果」を発揮してくれるのです。その方は自分の投薬が幸い効果があったようでした。
略語、大切なんです。
さて、RUQの痛みには心臓の痛みもあり得ます。
父は試しにNTGを処方することが多かったです。即効性があり効果が確かめやすいから。自分はそれだと微小血管系の痛みもカバーしてしまい心臓か胆道系かわからず混乱するので先にUDCAを使う事が多いです。
電子レンジ内には独自の生態系がある
Your microwave oven has its own microbiome
電子レンジのような過酷な条件内でも生き残る多様な細菌がいるのだそうです。海底火山の噴出口のような場所にも細菌がいるのですから、驚きではないのですが。
これを題材にして、LLMに小説を書いてもらいました。いい感じの要約になっています。
「マイクロウェーブ・エコシステム」
ブザーが鳴り、ガラス扉が開く。新たな一日の始まりだ。
我々は、人間が「電子レンジ」と呼ぶ金属の箱の中で生きる微生物。バチルス、ミクロコッカス、スタフィロコッカスを中心とした私たちのコロニーは、人間の皮膚や頻繁に触れる表面から移住してきた先祖たちが築いた、独特の生態系だ。
朝、人間が何かを温め始める。マイクロ波放射が私たちを包み込む。多くの仲間が死滅するが、私たち極限環境微生物は生き延びる。この過酷な環境で進化を遂げた私たちにとって、これは日常の出来事だ。
昼になると、新たな仲間が到着する。人間の手や食べ物についてきた彼らを歓迎する。時にはクレブシエラやブレブンディモナスのような危険な親戚も混じっているが、私たちのコミュニティはバランスを保っている。
午後、研究室の電子レンジでは特別な出来事が起こる。化学溶液や検体の加熱で、より過酷な環境が生まれる。ここでは私たちの遺伝的多様性が最も豊かになる。放射線、高温、極度の乾燥 - これらの試練が私たちをより強くする。
夕方、人間が電子レンジを掃除し始める。多くの仲間が失われるが、私たちの一部は隙間や細かい傷に隠れ、生き延びる。これもまた、私たちの進化の過程だ。
夜になると、私たちは休眠状態に入る。エネルギーを節約し、次の日に備える。私たちの存在は、清潔と汚染の境界線上にある。危険でもなく、完全に無害でもない。ただ、この小さな生態系の中で、私たちは生き、適応し、進化を続ける。
明日は何が待っているだろうか。私たちの遺伝子が、有害物質の浄化など、人間に役立つ技術につながる日は来るのだろうか。それとも、永遠にこの閉じた世界で生き続けるのだろうか。
ガラス扉が再び閉まる。また新たな一日が終わった。電子レンジの中の私たち微生物たちは、静かに次の朝を待つ。人間が気づかない間に、私たちの小さな進化のドラマは続いていく。

柔軟だなあと思ったこと
薬の供給は国益に影響します。災害や戦争との関係性も高い。米国とEUでも時々バチバチやってますし、俯瞰することは社会を理解することにもなります。
HIVなどの薬は不可欠であるため、製薬メーカーがその国の情勢に合わせた価格で供給できない場合や、価格が不当に高いと考えられる場合、特許料を一時的に脇に置き、認可された製造業者がその薬を生産するシステムがあります。このシステムを運営するのが、国連の支援を受けている “Medicines Patent Pool”(MPP)です。医薬品特許プール。知財と人権、国益のバランスをどう取るかの問題。
さてこういうニュースがありました。日本でも欠品しているGLP-1アナログ。米国では「欠品している薬は、薬剤師が自分で製造しても差し支えない」という文書があるようで、まさに名作テレビドラマ「ブレイキング・バッド」の世界なのですが、「うちの薬剤師は極めて高度な手法を駆使できますよ」という体でオンライン診療で患者に供給しはじめた企業があります。
「ウゴービ」より85%安い、新興ヒムズが同じ有効成分で減量薬参入
他にもいっぱい企業が参入したんだそうです。市場が1年あたり1500億円。
これにはリリーも本気出さざるを得ず「ちょっと出し」のマーケティングをやめて潤沢な供給をスタートしたように見える。こういうニュースがありました。
米イーライリリー、減量薬配合剤の販売停止求め医療提供者に通告書
知財は保護すべきだけど、寡占をいかに防止するかも重要なんでして、このバランスを取るのに「緊急時のDIYは認める」みたいな決まり事が案外役立ったりするのかもしれないなあ、と感心した次第です。ダイナミックな国ですね。
一方で、この案件かどうかはわからないのですが、HIMSが”Federal Trade Commission: FTC”(連邦取引委員会)の調査を受けているとSNSで噂され、「はい、任意で協力しています」との声明を受けて7月中旬に株価は急落。8月13日のリリーの提訴のニュースに株価が無反応であるところを見ると、すでに織り込まれていたと考えるのが妥当なのでしょう。
それでもこの会社はテバ(ジェネリックの最大手)との関係を構築していたり、今後も「チャンスがあればいつでも自分で作ります」という姿勢を打ち出しているところが、生半可なオンライン診療メーカーとは違うなー、すごいなーと思ったりしつつニュースを楽しんでいます。
ついでに遠隔診療企業のビジネスモデルをざっと見る
オンライン診療を自分でやっていて思うのは9割が患者のリテラシーに依存するビジネスだ、という事です。そういう目で米国の上場企業を眺めてみます。
- テラドック・ヘルス (Teladoc Health) - オンライン診療最大手ではあるのですが、後述するLivongoの買収に自分の時価総額を超えるお金を使ってしまい株価は低迷しています。
- リヴォンゴ・ヘルス (Livongo Health) - 糖尿病のケアをしますが、この会社のKPI(重要業績評価指標)は「顧客にどれだけ信頼されているか」であるそうで、コーチングや電話も駆使してサポートするんだそうです。2020年までの業績は非常に順調で1000億円いかない年間売り上げでしたが、1.4兆円ほどでTeladocに買収されました。
- アイリズム・テクノロジーズ (iRhythm Technologies) - 不整脈診断をBtoBで提供する企業ですがオンリーワンの技術はなさそうな気がします。すぐ他企業に追いつかれてしまう。時価総額3000億円。同じような商品を出しているメーカーWellueがあり、Lepu Medical Technologyという中国の会社の孫会社なのですが、Lepuの時価総額は5000億円いかない程度です。
- アメリカン・ウェル (American Well, AMWL) - BtoB型の企業ですが、非常に多くのことをしているにもかかわらず株価はすごく低迷しています。売り上げ、時価総額共に数千億円規模。
- ドキシミティ (Doximity) - 医療専門家向けのソーシャルネットワークです。広告収入が主体で、エムスリーと似ています。オンライン診療もしていますが、まだ規模が小さいです。
- ワンメディカル(One Medical )- 5300億円でAmazonに吸収されましたが、会員型の遠隔診療を提供しています。非常に強いのでは?と予測されている企業ではあります。まだ赤字。
価格で強みを持つ(HIMS)、リテラシーと疾患の複雑性をバランスさせ、手助けが必要な人々にはきちんと手を差し伸べロイヤリティを高めること(Teladoc)、医者の個性が必要ないこと、定期的な処方に限定、BtoBは微妙、そして、やはり顧客側をコントロールすることはできないビジネスだ、という事を強く思いました。
ただし、遠隔診療は小さなビジネスで行うケースも多くありますから、必ずしも独創的なビジネスモデルが必要ではありません。乱立と言ってもいいほど沢山あって、米国の掲示板をちょっと覗いても10程度の会社名が出てきます。そして米国の場合は「Prior Authorization(事前承認):PA」が重要だとわかります。これは、特定の薬や治療を処方する前に、保険会社が承認を行う必要があるプロセスを指します。医師がGLP1受容体作動薬などの特定の薬を処方する際、保険会社からのPAが必要な場合があり大変なので、それを組織的に行えれば遠隔診療に優位性が働きます。
例えばフォーミュラリーを導入して相対的に安い医療を提供するなどの工夫が遠隔診療では可能ではあります。
医療費全体を安くするには慢性期=オンラインでの多職種による丁寧なサポート、急性期=オフラインの棲み分けが合理的であろうとは思えます。そういうサンドボックスが世界のどこかに出来ても良いかもしれないですね。
小学生に学ぶ
SAPIXという小学生の塾があって、自分はあんまり予習も復習も好きじゃないのでSAPIXの方針とは合いませんが、先生方が作る問題は自分の知識を確認するには割合便利です。今年時点でのSAPIXの時事問題から自分が学んだことを羅列してみます。
じじもん Scrum(スクラム):中学入試の時事問題学習サイト
- 書店主が自分の現状を嘆いた(取次会社である日版、トーハンなどに苦言を呈したとも言えるし、DXできていない自分を嘆いたとも言える)文章がバズっていたけれど、数ヶ月前に経産省が「書店振興プロジェクトチーム」を作ったばかりだというニュースがあり、しかもSNSでバズった中で一人もこのニュースに言及していないところが、SNSでの人間はものを一面から見るのがやっとだ、という事を示しており面白いなと思いました。
- 国際刑事裁判所(ICC)所長に赤根智子さんが就任されたわけですが、この選択肢に中満泉さんの名前もあり、また歴代国際司法裁判所判事である、小和田恆さん、岩澤雄司さんの名前も見えて選択肢に関心しました。
- サステナブル・ラベルの意味を問う問題で、懐かしいエナジースターもあったよななどと。ちゃんとスーパーに行ったらラベル見よう。持続可能と脱炭素が両立するかどうかという難しい議論はともかくとして。

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SAF(持続可能な航空燃料)を何%使うみたいな目標があるのは知っていましたが、このために廃油が高騰して1kgあたり46円が120円になったなんて知らなかったです。相模大野発祥の「かつや」チェーンは廃油を出さないようにしていると聞きました。油のろ過器が用意してあるらしい。廃油がお金になるとしても、やはりフィルター+還元剤でずっと油を継ぎ足し使うほうが良いのでしょうね。ご家庭の食用油は分別ゴミとして収集されて再利用されるそうです。
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小学生は全国の地図などしっかり覚えることが求められたりしますが、国立公園もそういえば覚えたな(もちろん忘れている)と思いました。ところが、令和6年6月25日に国内で35番目の国立公園として指定された、日本最大「日高山脈襟裳十勝国立公園」が環境省の「日本の国立公園」というページにはまだ載っていないんです。「国立公園に行ってみよう」というページには載っています。サイト構造を見ると、上の「日本の国立公園」は各国立公園事務所からの情報をボトムアップ形式で載せているようなんです。そして下の「国立公園に、行ってみよう!」は環境省本体が作っている。したがって「日高山脈襟裳十勝国立公園」事務所から何らかのアクションが無い限りは「日本の国立公園」ページは更新されない。サイトのメンテナンスはまことに難しい、の一例を見た気がします。