クランベリージュース/ニッケルアレルギー/サプリメント/Pink Floyd
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骨盤底筋体操は基本です
クランベリージュースを飲むことは、長い間、尿路感染症(UTI)を発症する女性のための予防戦略でした。また尿路感染症を発症したあとも「飲みなさい」とよく言われます。こういう伝承を「MYTH」と英語圏では呼びます。日本では民間伝承と言うのでしょうか。神話という訳語は不適なように思います。

1973/10/21のNYTimesの記事です。レニ・レナペ・インディアンの伝説によると1000年前、荷役獣マストドンと他の獣との間で大きな争いが起き、それを終わらせるためにGreat Spiritが雷を落とし土地は荒廃した。そこに生えてきたのがクランベリーであり平和の象徴だという事です。非常に痩せた土地に赤く美しい実をつけるクランベリーに相応しい神話を作るレニ・レナペ族のセンス!!
クランベリーは北米原産としては唯一のベリー類とされます。インディアンはクランベリーを染色や携帯食(Pemmican)、湿布として利用しましたが米国に入植した人々は彼らと共生していたクランベリーの利点にすぐに気づき普及していきました。その収穫方法が独特で人気です。「洪水撹拌法」などと言われますが、写真はご覧になったことがあるでしょう。
Cranberries, a Thanksgiving Staple, Were a Native American Superfood
1700年代にはクランベリーはヨーロッパに伝わり、現在はヨーロッパでも収穫されていますが、赤に染まって美しいこの収穫方法の発明は比較的新しく1962年です。これにより大幅に収穫がスピードアップし、フレッシュさを保つことが可能になりました。
さて、UTIにクランベリージュースを飲むという事になったのがいったいどういう経緯なんだろう、と調べるのに苦労したのですが、1909年のJAMAにヒントはあります。引用の引用の形ですが、Berliner klinishce Wochenshrift April 3, XLVI, No. 14. pp. 625-668の要約の中に、“Die Pyelocystitis des Kindesalters. (Pyelocystitis in Children)” F. Göppertという本の内容がまとまっており、彼が子供の尿路感染症へのクランベリージュースの効果を確かめた、とあります。最初は子供にレメディとして飲ませたのでしょうね。それが女性にも普及したのかなと。
医療ドラマ「グレイズ・アナトミー」で、男性と懇ろになった主人公医師に翌日膀胱炎の症状が出る。そこで同僚女性医師が「ほら飲みなさい」と大きな抗生物質の粒とクランベリージュースの瓶を渡す、というシーンがあります。その知識は米国の一般視聴者が特に違和感を感じない程度には普及しているのです。1977年のNYTimesに「それを蜜月膀胱炎と呼ぶ」「クランベリージュースが有効」という記事がありますから、その時代にはかなり知れ渡っていたと考えられます。
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1994年10月8日のNew England Journal of Medicineに、クランベリージュースを飲んでいると尿内の菌が実際減っている事が示され話題になったようです。これも新聞の記事になっており、以後様々な研究が行われました。その結果は集積されコクランレビュー(権威がある)に掲載されています。

集積された医学的証拠によれば、クランベリー製品を消費することはUTI を予防する効果的な方法であることを示しています。コクランレビューの「クランベリー製品の利点を調べた世界的な研究」で、クランベリージュースとそのサプリメントが、女性で症状のある UTI を繰り返すリスクを4分の1以上、子供では半分以上、また、医療介入後のUTIは約53%抑制できる事を示しています。アントシアニンが細菌の膀胱壁への付着を妨害するからだ、という説明があるのですがアントシアニンを含む他の果物ではこの効果を再現できないらしく、詳しい機序はこれからさらに研究されるでしょう。
ところで名医(私の父のことです)は膀胱炎にダーゼンという今はない薬を処方していました。2011年2月21日のことですが、武田薬品は消炎酵素製剤「ダーゼン」(一般名:セラペプターゼ)を自主回収すると発表しました。セラペプターゼは、Serratia 属細菌から製した蛋白分解作用を有する酵素であり本邦では1968年に上市されています。この酵素はブラジキニン、フィブリン、フィブリノゲンなどを分解しますがアルブミンやグロブリンには作用しない特徴があるので、炎症に伴う血管透過性の亢進や浮腫などを抑制したり粘稠性の高い粘性痰や膿性痰を断片化して去痰作用を示すとされていました。膀胱炎に名医が使うのはなぜか?と考えて思いついたのは、膀胱壁の炎症のフィブリンなどを分解する事により、細菌の壁への付着を防ぐのではないか?という機序です。これはクランベリージュースと似た発想だなと思ったわけです。ダーゼンが自主回収になると医師たちは「ざまあ」とか「やっぱり効いてなかったよ」などとSNSで発言していましたが、自分は愚かな発言だなと思いました。効かない薬をあなた方は出して平気だったんですね、と。自分は頑固な粘調の痰(いわゆるムコ多糖だけではない、蛋白も関与した痰と推測される)の患者さんにダーゼンを処方して「生き返った」と感謝されたことが何度もあります。症例を選んで使っていたのでSNSで発言するような医師たちとは違う意見でした。薬価が確かカルボシステインより高かったので、馬鹿みたいに使う事はしていません。セラペプターゼは個人輸入で購入可能です。
全身性ニッケルアレルギー症候群(SNAS)
過敏性腸症候群と診断されても症状がコントロールされていない場合、アレルギーや炎症性腸疾患、内分泌疾患がきちんと除外されていない場合があります。
全身性ニッケルアレルギー症候群(SNAS)を忘れないでね、とリマインドするレターが自分の元に届きました。この概念は新しいものではないのですが、腹痛オンリーの患者さんの除外診断としては自分も思い浮かべません。通常他の症状があるからです。
この病気の報告が少ない理由ですが、ニッケルアレルギー自体がポピュラーになり、患者さんで金属アレルギーがあれば通常関連するものは忌避してくれますから、症状に接することが稀になる、ということもあり得るでしょう。また、通常抗アレルギー薬がすでに処方されていて症状が顕在化しにくい可能性はあります。
ニッケルはピーナッツなどナッツ製品、チョコ、オートミール、甲殻類などに含まれている事があり、それが腹痛を起こすわけですが、いつもではなく「時々痛いが食事との関連が曖昧」という事も発見しにくい理由だろうと思います。
ニッケルアレルギーの診断方法ですが、皮膚科でのパッチテストです。しかし果たして腹痛オンリーの患者さんでそれをするべきなのか。(さすがにtoo muchでは?)
https://rebelytics.ca/LND/lowNiDiet_r7.0_summaryTables.pdf
ざっと上のリストを見て、自分の経験上は高ニッケル食品特異的に腹痛のみを起こす患者さんは見たことがないんですけれど見落としはあり得る話です。ニッケル以外では、アレルギーが少ないとされるチタンでも反応する人がいるかもしれないと考えて薬の添加物をチェックしたりしてますが難しいですよね。SNASを最近症例発表した先生は「絶対いっぱいあるはず!」と警告しており、ニュースサイトでも取り上げてるので脳内には入れておきました。
理想的なサプリメント探しが難しい話
薬九層倍という言葉がありますね。江戸時代の囃子詞で「魚三層倍、呉服五層倍、花八層倍、薬九層倍、百姓百層倍、坊主丸儲け、按摩掴み取り」があって、その中に存在する言葉。坊主丸儲けはご存知ですね。 江戸時代時点での各ビジネスモデルにおいて、原価に対する粗利(あらり)を表した言葉です。「お前ら儲けてんだから安くしろ」みたいな妬み嫉み、教養のない言葉ではもちろんなくて(江戸時代の経済のレベルは非常に高く、先物相場も存在しましたし、ローソク足は今では世界で使われています)「販管費など自由度が高い商品であるが故に、差が大きいですよ。消費者こそ賢くなれ」という言葉でしょう。なかなか知恵の詰まった言葉だと思います。 さて、現代でもお薬は儲かるビジネスモデルでなければならず、決算報告書を読む時に販管費をどう使っているか、は重要視する部分だと思います。サプリメントでは製品に差はあまりありません。広告に負う部分が大きいため、マーケティングが上手いか下手かが企業の差になってしまうのです。
結果的に製品の質がばらつく事になるのは残念であり、正確な情報が広がりにくいという現状があります。それを妊娠中の女性に関して調査した報告があります。 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002916523000035?via%3Dihub
妊娠中の女性の90%は妊娠中に食事だけでは十分な栄養素を摂取できず、サプリメントに頼る必要があります。しかし以下の条件を満たすサプリメントは、調べた20547製品のうちの1つだけでした。しかもそれは月200ドルと、残念ながら高額でした。 目標は以下 ・198mcgのレチノール ・7-91mcgのビタミンD ・169-720mcgの葉酸 ・383-943mcgのカルシウム ・13-22mgの鉄 ・59mg以上のオメガ3脂肪酸
これを満たす安価な組み合わせのサプリメント情報を消費者には提供する必要があるのかもしれませんが、これは最適化問題を解くように難しいですね。レチノールは多すぎてもいけないんです。人により体格や食生活も違います。こういうところが難しいのです。「何が良いんですか」などと安易に質問するものではない、という事です。
The Dark Side of The Moon
自分はピンク・フロイドの “The Dark Side of The Moon” というアルバム名は知っていましたが、それを「狂気」と翻訳していたとは知りませんでした。それはどーでも良いのですが、名盤ですから聞きながら研究していた研究者がいた。そして「わお、もしかして暗い月食が起きるときって必ず大きな火山の噴火のあとじゃないか」と気づいてしまった。控えめに言って天才ですね。
それで中世の文学において「今回の月食は暗い」と記述がある場合、その前に大きな噴火があっただろう。歴史上の大きな噴火の時期を正確に絞り込めるんじゃないか?という事をしらべて論文にしました。

Natureですよ。頼りになった文献の一つは藤原定家の1229年の月食の記載だったとのことでした。こういう気付き、良いですよね。 大きな噴火が起きますとその粉塵は地球の全体に広がります。月食では太陽の光を地球で反射し、それが月面を照らすのですけれど、噴火のあとは地球からの反射光が少ないために月食が暗く見えるという仕組みです。
文献は何年に書かれたという事がはっきり分かることが多く、これによって大きな噴火が起きた年代をきわめて正確に見積もることが可能なのです。
くわしーく書いてくれているサイトがあるのでご紹介しておきます。
”the Dark Side” はもともと人間に使う言葉で、スターウォーズにも「暗黒面」として出てくるからよくご存知でしょう。月を擬人化してその言葉をあてはめたピンク・フロイドのセンスは素晴らしいとして、月の満ち欠けで影になる部分を指すのか、しかしこのアルバム発表時には月の裏側を人類はすでに見ていてボッコボコなわけですから、そっちをダークサイドだと呼んだのか、あるいは月食のことなのか、しかし皆既日食のときに太陽を遮ってしまう月なのかもしれません。
ピンク・フロイドの歌詞を見ていると、言葉遊びが発端で ”The Dark Side of the Moon” という題名にしたのだと推測できます。歌詞に「lunatic(精神異常者、狂人)」が煩雑に登場するのです。日本のアルバムタイトルは ”lunatic” を翻訳したのでしょう。月は名詞はゲルマン語由来で”moon”、形容詞はラテン語由来で”lunar”と言いますが、lunaticは「月がもたらす病気」であり古くはてんかんを指していたようです。”Moon Sick”は星野源の曲にもあって、当然ピンク・フロイドは意識しているかと。そのアルバムの最期の曲がEclipseですから、ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズは皆既日食時の月をイメージしているのかなと。 では、そもそもてんかんや狂気と「月」のイメージはどう重なるのでしょうか。ロジャー・ウォーターズのように皆既日食なのでしょうか。月の満ち欠けはあまりにも調和がとれていて狂っては見えません。皆既日食より比較的煩雑に起きる月食を13世紀の人が”moon sick”転じて”lunatic”と使い出したのであれば、大変面白いよなあ、などと考えていました。