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プライマリ・ケア関連注目論文

目次

2022年4月に、Annals of Internal Medicine (内科では権威ある雑誌です)のプライマリ・ケア(一般診療)関連注目論文として紹介されていたものを紹介します。臨床感覚みたいなものを養う事は重要で、自分なりの読み方を示します。

高血圧診療にはマーケティング的手法が必要だ

高血圧診療で目標血圧(130未満)を達成していない人々は3分の1程度いるとされていますが、この時に「別の薬を追加するか/今使っている薬を増やすか」という2つの選択肢がありますね。どちらがより効果的だったのか、を調査した論文がありました。

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M21-1456

大規模な後ろ向きコホートです。新しい薬を追加したのは25%、75%は増量でした。新しい薬を追加すると4.5%血圧が低下、それに比較して量を増やした場合は3.8%でした。結果は良いとして驚くべきことにこの戦略を1年維持できたのは、前者は50%、後者は2/3でした。これほど脱落が多いとは驚きですね。

「どちらにせよ効果は限定的」が結論でした。前向きコホートと比べて後ろ向きコホートでは「患者さん側の因子が大きい」という医療の現実を知らしめてくれます。生活習慣病診療においてはマーケティング的思考が重要です。患者さんがいかに「自分の治療はこうしよう」と思ってくれるか、そのインサイトを掴む事が大切なのです。

高齢になると検査の対費用効果は低くなる

75歳以上の高齢者にマンモグラフィーは意味があるか、という研究です。

https://www.acpjournals.org/doi/abs/10.7326/M20-8076?journalCode=aim

これ良く質問されますね。50歳〜74歳では有用なんですが。

これはシミュレーションらしいのですが、1年1回は対費用効果は低い。79歳までは2年に1度のマンモグラフィーが対費用効果は高いとの結果でした。80歳以上では対費用効果は低いとされています。肌感覚とも合致します。

eGFRに人種補正は不要

eGFR(推定糸球体濾過値)が余命と良く関係している事は事実のように思われ、ただし日本人はeGFRが悪いのに案外長命なのでちょっと矛盾していますが、時々人種で違うという議論がありました。しかし結局人種による調整はしないことになっています。

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M21-2928

KFRE score という、尿蛋白を加味した腎不全予測法があるのですが、そちらのほうがeGFRよりは精度が高いし、やはり人種関係無しで良いでしょう、という結論になっています。水を飲みましょう、塩分は控えましょう、はeGFR維持のため重要。

シスタチンCも測定しておく、はお約束だと思います。

骨粗鬆症治療は途中休薬するのがトレンド

骨粗鬆症の治療は3−5年行うと休薬が勧められます。カルシウムを増やしてカチンカチンにすると逆に骨折が多くなるらしいとわかってきたからのようです。(ちょっと柔軟さがあるほうが良いかも的な、日本人は特にその傾向が強いとも聞きます)

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M21-2512

アクトネル(リセドロネート:第3世代)という薬と、ボナロン(アレンドロネート:第2世代)が有名ですが、アクトネルのほうが半減期が短いので休薬期間に骨折が増えるのだろうか?という疑問がありました。それを研究した論文です。結論としてはアクトネルがほんの僅か不利、という予想通りの結果でした。しかし差は少ないです。

骨粗鬆症の治療は、内分泌内科の分野でもあります。どちらか便利な方で治療を受けると良いですよ。

仮説の証明をするには研究デザインが重要とは思う

ビタミンDサプリメントは血中カルシウム濃度をわずかに上げるので、前庭機能が上がるから平衡感覚が正しくなる、あるいは筋力があがり転倒が少なくなるのではないか?という夢のような仮説があります。それを検討した論文です。

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/m20-3812

結論としては、サプリメントでは効果なしとのことでした。でも容量設定がちょっとおかしい(200IU-1000IU-2000IU-4000IUなので極端すぎる)ものでした。2000IU、4000IUでは有害事象が多いとされましたがさもありなん。雑な印象で残念でした。ビタミンDは容量設定がとても微妙なので、結構人によってこまかーく調節していますよ。

喫煙とランニングは脳内で似たような事が起きるのに結果は恐ろしく違う

がんと診断されてタバコをやめる人がいます。長期で入院になるからそりゃそうだろうとは思うのですが、やはりやめて良かったね、を支持する研究が出ました。

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M21-0252

いや、結構差があるので驚いたのですが。517人の非小細胞肺癌を7年追跡しました。

禁煙すると余命の中央値が、タバコをそのまま吸っている人より2年も長かった。(6.6年と4.8年)残存肺の機能の事も考えると、禁煙するのが良いのではないかとは思います。

喫煙者に厳しいのは以前喫煙していた人だ、と言います。それはあまり良いことではありませんね。禁煙出来る人を増やすためには禁煙成功した方が導いてくださるとありがたく、よろしくお願いしたい。

喫煙とランニングでは脳内で同じような事が起きるといいます。幸せになるらしいんです。でもその結果と運命が違いすぎます。今米国では大麻のほうが税収が良いらしく、タバコには逆風が吹いています。喫煙している人がお気の毒だから売らない、ではなく儲からないからどうでも良いや、だなんて虚しい。

さて故障がない人にとっては大麻よりタバコよりランニングがぶっちゃけ一番良いと思います。税収増えないからだめなんでしょうか。

アルコールの包囲網もかなりきつくはなっています

観察研究でアルコールは心房細動リスクになると示されているのですが、心房細動の患者さんでアルコールの量依存があるかどうかを見た研究。

https://www.acpjournals.org/doi/abs/10.7326/M21-0228

結論としては多く飲めば飲むほど心房細動リスクは上昇したとの事でした。血流が良くなるのが原因なのか、ケトン体が悪いのか。

ある花粉症の薬を飲むとアルコールで脳がダメージを受けにくいという説があります。関係ないですが。

出血で来院した患者さんを大腸内視鏡検査しておくことは重要

憩室炎には右側と左側がありますが、そのうち左側(主にS状結腸:欧米人に多いと推測される)の憩室炎に関する長期予後を議論したレビューです。

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M21-1646

米国ではメサラミンを憩室炎の再発予防に使うらしいのですが、意味はなさそうと結論しています。その他の薬たちは不明、と。憩室炎は血流障害だ説があるので、炎症のコントロールよりは循環改善が良いのではと思います。

憩室炎の直後の内視鏡検査ではポリープや癌の診断率が低い事が示されています。憩室の有無全体では癌の多い少ないは関係ないとされているので、憩室が多数あると観察が難しい事を示している可能性はあります。

一方で複雑な憩室炎、と表現されるグループに関しては癌などの合併が多いことが示されており、憩室炎発生時にきちんと診断フォローすることの重要性がわかります。

手術は再発率を低下させる事が示されています。

救急病院でCTだけして終わりにすることへの問題提起です。たぶん患者さんへのベネフィットが上回ると思います。