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エンゼルパイとスモアズ / ワクチン戦略 / 医療DX / 焼く / コウモリ / BATHEテクニック / 魅力ある研究

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目次

エンゼルパイとスモアズ

S’mores(スモアズ)は、アメリカの伝統的なキャンプファイヤーのお菓子で、私が1997年渡米当時「なに?エンゼルパイの原型がここに?」と驚いた記憶があるわけですが、これが原型というわけではなさそうです。調べてみるといろいろな「マシュマロ、チョコレート、ビスケット」という鉄板の組み合わせが食文化には登場します。

とりあえずBBQで皆さんにも作って欲しいスモアズについて。

  1. 起源: S’moresの正確な起源は不明ですが、20世紀初頭にアメリカで人気が出始めたと考えられています。
  2. 最初の記録: 1927年、ガールスカウトのハンドブック「Tramping and Trailing with the Girl Scouts」で初めてレシピが公開されました。この時点で既に「Some More」という名前で知られていました。
  3. 名前の由来: 「Some More」(もう少し)という言葉が縮まって「S’mores」になったと言われています。美味しさのあまり、「もう少し欲しい」と言う人が多かったことが由来とされています。
  4. 普及: 1950年代以降、キャンプやアウトドア活動の人気と共にS’moresの知名度も上がり、アメリカの伝統的なお菓子として広く認知されるようになりました。
  5. 現代: 今日では、キャンプファイヤーだけでなく、家庭でも電子レンジやオーブンを使って作られるようになり、様々なバリエーションも生まれています。
  6. 文化的影響: S’moresは映画やテレビドラマにも頻繁に登場し、アメリカの夏のキャンプや屋外活動を象徴する食べ物の一つとなっています。

S’moresは、その簡単な作り方と甘美な味わいから、世代を超えて愛され続けている伝統的なアメリカンスイーツです。歴史は比較的新しいですが、短期間で広く普及し、アメリカの食文化の一部となりました。

エンゼルパイの歴史を森永太一郎の渡米と絡めて、先ほどの形式で説明します。

  1. 起源: エンゼルパイの発売は1961年ですが、その起源は森永太一郎(1865−1937)の渡米経験に遡ります。苦労しながら31歳〜35歳の期間で製造技術を身に付け、帰国後マシュマロやチョコレートの販売に乗り出しました。
  2. 最初の記録: 1961年(昭和36年)、日本の高度経済成長期に森永製菓からエンゼルパイが発売されました。1899年にマシュマロ、1918年にチョコレート、1923年にマリーを市販した太一郎の菓子作りが融合した結果でした。開発陣は当時アメリカで市販されていたScooter Pieを参考にしたと言います。
  3. 名前の由来: 「エンゼル」は森永創業当時からのシンボルで、アメリカでマシュマロが「エンゼルフード」と呼ばれていたことに由来します。これは太一郎の渡米経験が直接反映された名付けと言えます。「パイ」はScooter Pieをそのまま引き継いだのでしょう。
  4. 普及: 三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)が普及し始めた時期と重なり、エンゼルパイは新しい生活様式を象徴する菓子として人気を博しました。しかしロッテのチョコバイの価格攻勢に破れていった、という印象を持っています。価格では勝てない。
  5. 現代: 時代のニーズに合わせて改良を重ね、現在では「エンゼルパイミニ」など、様々なバリエーションが展開されています。チェルシーは終売となりましたが、エンゼルパイは生き残って欲しい。だから買う。
  6. 文化的影響: エンゼルパイは、日本の菓子文化の近代化を象徴する製品となり、森永製菓の看板商品の一つとして長年愛され続けています。

エンゼルパイは、森永太一郎の渡米で得たチョコレート、マシュマロ、ビスケットという3つの要素の組み合わせによって生み出されていますが、チョコレートの量が多過ぎないところがベストバランスのように感じています。しかしそもそもこの手のお菓子は多く、歴史も長いです。このWikipedia(英語)でエンゼルパイは最後のほうにちょこっと出てくるだけ。ではベストバランスはどれなんだ!ということを100ページぐらいにまとめてコミケに出してくれる人を知っていたら教えて下さい。(たぶんいると思う)

Chocolate-coated marshmallow treats

ワクチン戦略徒然

インフルエンザワクチン

日本で製造されるインフルエンザワクチンは4価で、Aが2つ、Bが2つ、これまでの流行と、ある程度変異があった場合も推測した上で最も効くだろう型が選ばれます。細かに理由も語られていますがだいたい世界で同じようなセレクションとなります。我々庶民は難しいことは考えずに毎年打っていれば被害を最小限に出来ますし、自費で4000円弱の値段はコスパも良いと思います。65歳以上は1600円ほどでしょうか。なぜ高齢者よりも人数がはるかに少ない子供に補助を出さぬのか解せませんが。(自治体や健康保険組合により補助金が出る場合があるので調べてみて下さい。東京都は多くの区市町村で補助が出ます)

今シーズンから経鼻ワクチン(スプレーだから痛くない!)も正式に使われていますが、高い(10000円超えるかな)けれど受験生にはこれ、みたいな推奨を今まではしておりました。当院には入荷されません。もうどのクリニックも予約枠はいっぱいかもしれませんが、興味ある方は調べてみて下さい。

他のクリニックのように1000人も打てませんで当院はせいぜい300人程度ですが(嘘かもしれない、もっと多いかもしれない)、早めに電話か来院時に予約をしていただければと思います。

コロナワクチン

インフルエンザと同時接種も可能です。実績もあり、在庫管理が柔軟なファイザー・コミナティを皆さんには用意します。1人1万円超えるワクチンを100本も在庫するなど、当院のような小さな医療機関では無理なので、とりあえず10-20本程度在庫しておきますが、予約して下されば確保しておきます。ノババックスのワクチンは2人セットでご用意しますが、65歳以上で希望される方はほとんどいないかなとも思っています。

一部で話題になっているらしいレプリコンワクチンですが、これは「原価が100分の1に出来る」がコンセプトであり存在意義です。が、ほとんど出荷されないと見ています。原価が安いという意味ではアストラゼネカのもそうですが、それが数百円だろうが、買う人がいれば10000円越えで売るのが資本主義というもので「安さ=善」は机上の空論に過ぎません。ただし伝染病と戦うテクノロジーは国家あるいは人間の存続に関わりますので、新規の有望な技術にはある程度予算配分が行われるべきでしょう。技術がもっと進歩し、安全でバイオシミラー的なワクチンが安価で供給され平等な社会を実現する未来が実現すると良いなと思います。

子宮頸がんワクチン

キャッチアップ接種の予算が2025年3月までなので、接種をする場合9月末までにスタートしておかないと間に合わないですよ、と言われていました。まだぎりぎり間に合うと思うので「もう無理」と思わずに問い合わせて欲しいと思います。アフリカでは「1回でも非常に有効だった」という報告がありまして、それらの実績を受けて15歳になる前に1回目を打った方は2回でOKとなっています。値段が高く、本当に原価がそんなにかかるのかMSDに入社して偉くなって確かめたいぐらいではあるけれど、とりあえずシルガード9®️がたいへん優秀であることは間違いないようです。

帯状疱疹ワクチン

シングリックス®️があるので、その恩恵を受けた人(でもかからないことを実感はできないでしょうね)も多いと思いますし、自分も接種済み。けれど「自分はならない」と思っている人が9割ぐらいです。1本歯を自費で治すより安い料金ではありますが(2回で42000円〜50000円ぐらい)厚木市など近隣の市町村で助成(1回あたり10000円助成)が始まり、伊勢原市でも?と接種控えをする人もいまして、複雑な気持ちです。高いからこんなことになるわけで、原価がそんなにかかるのかGSKに入社して偉くなって確かめたいぐらいではあり、バイオシミラー出てこないのか?とは思います。米国では多くの健康保険がシングリックス®️の費用をカバー、イギリスのNHSも同様、と聞いたら皆さんどう思いますか?

日本でNHSのようなGPあるいはかかりつけ医制度を本当に浸透させたいなら、まずは必要なワクチンを無料にするとか、フォーミュラリーを浸透させるところから、と自分は思うんですけど。

肺炎球菌ワクチン

ニューモバックスNP®️(PPSV23)のみならずプレベナー13®️(PCV13)も打つように勧めて14年ぐらいになりますが、あまり理解してもらえず難渋します。打ってくださった方、まことにありがとうございます。10月からプレベナー20®️(PCV20)になりますが立ち位置としては同じで、日本の高齢者では定期接種にならない。バクニュバンス®️はPCV20に対する優位性は限定的と考え採用しません。

今後の当院でのスケジュールは以下の通りです。

PPSV23は65歳から5年毎。最初の1回目は3000円。以後7000円。

PCV20は、PPSV23を打って1年以上経過したら任意のタイミングで接種。PCV13は9200円でしたが、PSV20はもっと高いんでしょうね。

PCV20は小児にも接種していますが、抗原にジフテリアトキソイドを結合させることでT細胞依存性免疫応答が誘導され、より強力で持続的な免疫が得られるようになる点で優れています。したがって一生に一回で良いとされるのです。

海外留学あるいは出張するときのワクチン

渡航外来を検索して下さい。一番厳しいのがサウジアラビアでトランジットにすらワクチン証明が必要と聞いてます。最近はドバイ経由が多くなりあんまりその声聞かなくなりましたが。

水ぼうそう/麻しん/風しん/おたふくかぜ/A型肝炎/B型肝炎/結核/髄膜炎/黄熱病/破傷風/DPT(三種混合)/狂犬病/ポリオ/日本脳炎/インフルエンザ

ワクチンがなく予防できないのがデング熱/マラリア/チクングニア熱/ジカ熱などですがくれぐれも蚊に気をつけて下さい。基本的に海外から帰ってきて体調が悪い場合は、輸入感染症の可能性が高いため渡航外来に問い合わせることが重要です。

電子カルテと医療DX

父の書斎は10畳ぐらいの広さがありましたが、病理の標本と沢山の本と顕微鏡と、コンピューターがありました。昭和50年代です。

手術記録をコンピューターに入力していましたが、父の数人のお弟子さんから手ほどきを受けていたようです。MS-DOS以外にDR-DOSとかCP/Mなどと書いたフロッピーディスクがありました。20歳代で非常にコンピューターに詳しい医師が複数おられたのです。

それらの医師は臨床能力も飛び抜けており、自分は「コンピューターが使いこなせる=優秀な医師」と考えていました。実際に医者になってみるとプログラムを書きアルゴリズムを考えるには仕様を設計する必要があり、臨床のみならず制度にも精通する必要があります。また人に使ってもらうプログラムを作るにはインタビューの能力も必要です。やばい、優秀なのは当たり前なんですね。

大学ではみなが研究がしやすいように、あるいは臨床のサポートができるようシステムを設計してアプリケーションを作りました。横浜市立大学、Wayne州立大学、昭和大学藤が丘病院、がん研大塚病院、がん研有明病院。医局の医師や研修医・専修医は大きく恩恵を受けたと思います。

こういう医者は結構たくさんいまして、某有名病院のシステムを一人で開発していたなどの話も聞きます。ただ弊害もあります。経営者あるいは医局が「プログラムは優秀な医者が一人いれば無料で作ってくれる」と間違った認識を持ってしまうこと、医師としてのキャリアの邪魔になる場合があること。結局「辞めた」という話を何箇所から聞きました。日本はマネジメントに問題がある国です。

さて現在私は電子カルテ『ダイナミクス』を使っています。自分が作るよりも優れたプログラムを先に書いていた人がいまして、それが広島県出身の医師・吉原正彦先生です。電話で1分も会話しなかったと思うのですが「あ、1を話したら10通じ合えるタイプの人ね」と理解したのでユーザーとして2004年に合流しました。

日本の臨床を隅から隅までを理解しないとこのプログラム仕様にはならないだろうというのがソースコードとデータベース構造を見たときの直感で、結局私の見立ては正しく、吉原先生は優れた臨床センスを持っている人でした。あの病気を見つけた、この病気を見つけた話がたくさんあって面白い。それに加えて吉原先生の周囲には「自分でもプログラムは書くけど、ダイナミクスが良いからそれに寄り添ってます。当然臨床能力がすごいです」というタイプの医師が多く、話すと頭が良くなる。時々ユーザーの医師が集まって勉強会をするのですが、参加しているうちに出席率が良い自分は司会を頼まれることが多くなり、今は「ダイナミクス研究会」の会長をしています。

『ダイナミクス』は徐々に会社が大きくなり、本社がある日本橋箱崎町に時々遊びに行っていたところ、「もっとくれば?」と吉原先生に誘われて何年前からかな、顧問という肩書きをいただいて毎週通うようになっています。吉原先生は一線を退かれて、現在は優秀なスタッフが開発をしてくれています。医療DXのど真ん中にいる、と言って良いと思います。

今回はコロナ禍で中断していたユーザー会を再度行いましょうという事で9月14日および15日に横浜で研究会『第20回ダイナミクス全国大会』を開催しました。会場は栄光学園の先輩が社長をしているHOTEL PLUMMにお願いし、横浜市立大学の先輩で、前日本医師会常任理事の羽鳥裕先生にアドバイスをいただきながら準備を進めました。ゲストとして立川流真打立川談慶師匠をお呼びしてグリーフケアのお話をいただいたのですが、こちらは栄光学園時代の同級生と師匠が親しいという事でお願いした次第です。

無事に会も終了したのですが、常に考えている自分の問題意識として「プログラムをゴリゴリ書いたり、システム設計できる人々」と「プログラムを使うユーザー」をどのようにシームレスに繋いでいけるだろうか、ということがあります。そして全国大会のようにリアルに人々が集まる場では、問題点が明らかになりやすいし、解決策も見つけやすいのです。

よくある評価で「鵜川の言葉は難しい」があります。一方で「鵜川の言葉は実にわかりやすい」とも言われます。ある人にはわかりにくく、ある人にはわかりやすい、というのは社会でよく観測される事実ですが、この伝達の難しさ/易しさには多様性がある、ということが重要です。

全国大会で130名ほどの人が集まると、情報が「難しくても、それを理解した人により別の言葉に変換され、さらに別の人々にうまく広がっていく」様子が観察されます。これを自分は「グラデーション」と表現しました。ユーザー同士がリアルにつながっている『ダイナミクス』は特別な存在で、DXがスムーズに起きる最適な環境を提供しています。今後は医師のみならず、システム担当、事務職員も含めて大きな集団として発展していけばさらにDXがスムーズに行われるはず、と思っています。

こうしたつながりは、電子メールやパソコン通信の掲示板で行われていた時代から現在はSNSなどにアップデートされていますが、手段は時代にあわせて変化しつつも結局のところ人間を人間たらしめている「体験の共有ができる」という種としての特徴は変わらないでしょうし、そうした共有ができない製品は消えていくでしょう。だからこそ、今後も『ダイナミクス』のユーザー会活動は大切にしていきたいと考えています。

焼く

お餅はこまめにひっくり返すと美味しく焼くことが出来ると知りました。正確には、そういう諺を教えてもらったのです。

何年まえか忘れましたが年末に和食を食べに行った時の事です。魚を焼いてくださったんですけれど、多分自分が「まだ焼けないの?」みたいな顔をしていたんでしょうね。店主が「魚は殿様に焼かせよ、餅は乞食に焼かせよっていうことわざがあるんですよ」って教えてくれまして。笑

じゃあ、自分はお餅は得意だな!と思ったのと同時にこんなことを思い出しました。NHKでミシュラン星持ちの店主(たぶん和食でしょうね)がお餅の焼き方をレクチャーしておりました。炭火で焼く時にはよくひっくり返せ、あるいはオーブントースターで焼くときは十分予熱せよと。表面には素早く火を通し、水分が飛んでいかないようにしつつ、転がしてまんべんなく焼くと膨らんでコブが出来て割れて水分が飛んじゃう事故が防げるのだそうです。なるほど水分を中に閉じ込めるための手法!と理解できますね。

「やきもちを焼く」は一般的にただの言葉遊びと解釈されていますが、くるくるとひっくり返す様子がその心理をあらわす、ダブルミーニングだとすれば面白くないですか?後述するほっぺをふくらますような餅を焼く様子よりは、大人な感じがします。

漫画では餅はプクーっと膨れるじゃないですか!あれに影響されてわざとひっくり返さないのがデフォだったので、今まで全然間違った人生を歩んできました。あの餅をプクーって最初に書いた漫画家だれだろう??ってかすかに思いました。

さて、学習して頭が良くなった私は、トースターに入っているお餅をこまめにひっくり返そうという作戦を実行しようとしました。ところがサトウのお餅は片面焼きに最適化するため十字に切れ目が入っている。そのせいで柔らかい餅の一部が露出、ひっくり返すと直ちに網にくっついてしまうという欠点があることを見出しました。(まあ、トースターの場合しっかり予熱してじっくり焼け、で解決できるのでしょうが)ふむ。この特許に関する訴訟を見る限り、越後製菓の特許のほうがまだ有効そうではありますね。

お餅の切れ目が15億円の賠償に!?特許から学ぶ起業・経営の注意 | 起業・会社設立ならドリームゲート

さて目黒のサンマも、お殿様が魚を焼く話にしてしまえばもっと蘊蓄がありそうなんですが、普通お殿様は人任せですわな。魚の焼き方に関しては最近日本料理大全が公開されて話題になりましたね。

日本料理大全/JAPANESE CUISINE | 京都府立大学

うなぎが「焼き一生」と言われるように、日本料理において「焼き場」は通常10年以上の経験を必要としますし、ニューヨークの高級ステーキハウスにおいても焼き職人は特別高給なことで知られています。

日本料理大全では、魚や肉の下処理について非常に細かく述べられていて、失敗しにくくかつ美味しくなる工夫をした上でさらに熟練が必要なのだとわかります。昨今は真空調理+炙りなどの技術もあって美味しいものが我々の手に届きやすくなった気もしますが、岐阜の「柳家」はじめ上をみたらキリがない。

その点お餅を美味しく焼くことは、庶民にとっては簡単かつ最高の楽しみなのかしら、などと予約がはじまったお節料理を眺めながら思うのでした。

赤ちゃんを健康に育てるため、コウモリを守れ

赤ちゃんを健康に育てるためには、手をこまめに洗い、ワクチンを接種し、タバコの煙を避ける――私たちはこんなアドバイスをよく耳にします。しかし、赤ちゃんを守るために「地域にいるコウモリを守れ」というテーマについて、自分は考えたことがありませんでした。

The economic impacts of ecosystem disruptions: Costs from substituting biological pest control

この論文は「Science」の9月6日号に載っているのだから、新規性が評価されていると思います。この論文は何がすごいのか考えてみましょう。

研究者が最初に気づいたのは、米国の地域ごとに統計を取ってみると、「コウモリが減少する地域では、赤ちゃんの死亡率が増加する」という驚くべき事実でした。

Eyal G. Frankらの研究は、「ホワイトノーズ症候群(WNS)」というコウモリにとっての致命的な感染症が2006年に突如発生したことを利用しています。WNSはコウモリの大規模な死を引き起こしました。コウモリは害虫を駆除してくれていたので、彼らが減少した結果として多くの害虫が発生してしまい、農家は農薬を多く使わざるを得ませんでした。

この感染症の流行は、コウモリの数が急激に減少した地域と、減少しなかった地域を比較するのに適した条件を提供し、実際の生態系や農業運営に対する影響が「実験的」に観察可能で、厳密な因果関係の証拠を示すことができました。

Frankらは、アメリカの郡単位で農薬使用データや新生児死亡率、農業収益などの詳細な政府データを収集し、コウモリが減少した地域とそうでない地域の違いを統計的に分析しました。

具体的な結果として、WNSが発生した地域では、農薬使用が平均31.1%増加し、新生児死亡率が7.9%増加したと報告されています。

さて、Frankは過去にどういう論文を書いている人なんだろう、社会的な問題にこういう形でメスを入れる学者もいるのだなあと興味を持ち、彼の活動を探りました。すると以下のような論文を書いていました。

その一つで彼は、中国が1958年に開始した「四害(ハエ・蚊・ネズミ・スズメ)駆除運動」がスズメの根絶を引き起こし、その結果、農作物の生産性が大幅に低下し、市民の死亡率増加につながった歴史的事例を検証する研究も行っています。

他に、インドにおけるハゲワシの絶滅が公衆衛生に及ぼす重大な影響を分析しています。ハゲワシは、死骸を処理する効率的なスカベンジャーとして環境の清潔さを維持する役割を果たしていました。「キーストーン種(生態系の健全性に不可欠な種)」と呼んでいます。しかしジクロフェナク(ボルタレン)の特許が切れたことで、その薬が広く使用され、結果としてハゲワシに致命的な影響を与え、絶滅してしまいました。これによって、環境衛生に大きな悪影響が生じ、人間の死亡率が4%以上増加したと推定されています。

データを味方につけることで、このような活動もできるという事に感銘を受けませんか?

BATHEテクニック

私は外来でBATHEテクニックをしばしば使います。どこかで読んだのか、いつの間にかやっているのかが定かでありません。たぶん自分で身につけたのでしょうが、「主訴をひとつだけに絞る=誤診が減る/クレームが減る」を研ぎ澄ました結果として、このような会話方法を結果的に使っていると意識しています。

最近はじめて文章らしいものを読みまして、あー同じ同じと多いましたが、この会話テクニックは1970年代1980年代から米国医師の間で広がりを見せていたとのことです。コミュニケーション強者の手法は似てくる、の典型。

書物に登場したのは1990年代で、“The Fifteen Minute Hour: Efficient and Effective Patient-Centered Consultation Skills, 2nd Edition”らしい。著者のサイトもあり、15minutehour.com でアクセスできます。

割と最近概念が登場したPositive BATHEというテクニックもあり、これも外来では自然に行っています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC181054/

BATHEテクニックとは

  1. Background(背景)
    • 最近の様子を自由に話してもらいます。
  2. Affect(感情)
    • 患者さんの感情の動きにフォーカスしつつさらに聞きます。
  3. Trouble(問題)
    • 問題点を列挙して、順番をつけます。
  4. Handling(対処)
    • それぞれの問題に患者さん自身が行った対処について聞きます。
  5. Empathy(共感)
    • 普通のインタビューでは2の時点で共感を表しますが、BATHEテクニックでは患者さんがどう対処したかについて特に強く共感を示します。

2の時点で共感してしまうと、停滞しがちです。4まで聞いてから共感すれば「患者さんがかわいそうだ」という感情に引っ張られずに、問題解決に向かっていくぞというベクトルが強調されるように思います。

自分はBATHE法を意識していませんけれど、患者さんの話題がぶれてるなーと感じるときほど不安定なのですから、なるべく遮らずある程度自由に話してもらった上でその言葉を変え、整理し、順番をつけます。そして「あなたは正しいことをしている」まで同じです。「惜しいです」ということもあるけれど。

一般の人もBATHEテクニックは使える

ところで一般の人でも最近は「寄り添い」を意識して喋らねばならないようです。慣れないと疲れるだろうと思います。そして寄り添うためのポジティブな言葉を探すのが難しいと相談を受けることがある。上記の場面で言うと2.の状態で共感を示そうとするとそうなんですね。

その場合、相手が行った対処方法を聞き(何もできなかった、も対処のひとつですのでそれで良い)、それに「ああ、無理も無い」「私もそうしただろうと思う」など共感してみると良いでしょう。すると必ずしも悲観的にならずに済むと思うのです。

ポジティブである必要もない

さて自分はBATHEを意識しないと書きましたが、可能な限りポジティブシナリオはこうだよねーみたいな話を外来では良くします。だから僕がいつもポジティブな言葉で励ましてくれると思っている患者さんがいますけれど、そうでもありません。

ちょっとネガティブっぽい患者さんが、医者にニコニコ励まされることで、さらに傷つくという事があるのです。「異常がなかったとされ、励まされて辛い」という主訴はよく聞きますので、あんまり医者が元気すぎるのも合わない人がいるんだろうと推測します。

「つづく」がBATHEテクニック

「終わり」にせず「続く」にするのがBATHEテクニックの本質だろうと僕は思います。「強く励ます」はしばしば「これであなたと関わるのは終わり」の意味になりやすく、一般の人のコミュニケーションでも気をつけた方が良いと思います。

あなたと関わりを続けたいですよ、という感情を込めた言葉を選ぶとうまく行くんじゃ無いでしょうか。あるいは直接そう言ってしまう。

医者の場合は多数のシナリオを作る事ができますから、あなたの次回のシナリオはどれを希望しますか?まで出来るのが強みかもしれません。

BATHEテクニックの例外

BATHEテクニックは、急病や、強い苦痛に苛まれたり、自殺願望のある人には使いません。またDV被害者などにも使いません。なぜならばそれらはすぐに専門的な対処が必要だからです。まるでハッピーで、悩みがない人も25-75%いるので、その時に使うのはPositve BATHEです。(良かった出来事を強調して共感します)

さてこれを1分で出来るのか

説明書にはこれらのコミュニケーションはトレーニングすれば1分まで短縮できる、と書いてるんですが、そこまでプロトコル化されちゃうと嘘っぽく無いだろうか、ということでわざともうちょい時間をかけてます。

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魅力ある研究の話をもう一つ

友人から教えてもらって話題になっていたのでご紹介。NHKのこのメディアは時々魅力的な取材をしますね。

Natureダイジェスト(ScienceNatureはライバル誌みたいなものだけれど、注目論文に関してはすぐに論評が掲載される)に紹介された論文の内容

窒素ガスを細胞の増殖に有用な形に変換できるタイプの細胞小器官(細胞内の重要な構造体)が発見された。「ニトロプラスト」と呼ばれるその構造体が藻類種に発見されたことで、植物が自身の窒素を変換、すなわち「固定」させるよう、遺伝子操作を加える取り組みが加速する可能性がある。これによって、作物の収量が増加し、肥料の必要量が少なくなるかもしれない。この研究論文は、2024年4月11日にScienceに掲載された。

自分もScienceなどの著者名は見て、日本人ぽい名前を見つけると調べたりすることがありますが、正直気づかなかったです。しかも極めて重要な役割を担っていました。アイディア提供の足立先生も共著者になっています。

わたしの研究がまさか…科学雑誌の表紙になるなんて | NHK | WEB特集